確定申告書の作成で税務署に行っても、1時間で手続きは終わりません。
特に確定申告期間の終盤になると、
相談するまでに2時間
申告書の準備に1時間
合計3時間
このくらいの時間が必要になることを覚悟しなければいけません。
所得税の確定申告期間は2月16日から3月15日の1か月間です。
ですが、実は還付申告の人は1月1日から申告書を提出しても法律上問題ありません。
(1月1日~3日までは税務署は閉庁日ですので実質1月4日から)
また、確定申告書は税金を納める人のための手続きのイメージがありますが、7割は還付申告書の提出です。
東京国税局の平成29年分の所得税等の確定申告書では、582万件の内174万人(約3割)だけが納税申告書を提出した人となっています。
平成29年分所得税等の確定申告書の提出人員は582万3千人で、平成28年分(569万8千人)から12万5千人(+2.2%)増加し、5年連続の増加となりました。
このうち、申告納税額がある方(納税人員)は174万2千人で、所得金額は14兆7,085億円、申告納税額は1兆3,186億円となっており、平成28年分と比較すると、人数(+1.4%)、所得金額(+4.2%)及び申告納税額(+4.9%)はいずれも増加しました。
出典:東京国税局 平成29年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
ですので、全体の7割の人に関しては1月中に税務署で申告書を提出しても何も問題はありません。
とはいうものの、税務署は確定申告期間である確定申告期間は2月16日から3月15日までに申告するようにと広報しています。
国税組織があれだけアピールしているe-Taxの作成コーナーでさえ、2月16日まではホーム画面に大きく掲載されることはありません。
普通だったら1日でも早く申告して欲しいと思いますよね。
ですが、国税組織としては2月16日から3月15日までの間で全ての相談を終わらしたいのです。
それがたとえ納税者の苦情・不満に繋がったとしても。
理由をご説明していきます。
1:税務署は1月までは税務調査するための時間に費やしたい
税務署は税金を取り扱う仕事ですが、その傍ら税金を申告していない人を取り締まらないといけません。
それが税務調査です。
ですので国税組織として税務調査は第一優先事項であり、構造的に税務調査が出来ない職員が出世できる仕組みは全くありません。
しかし、税務調査にはどうしても時間が掛かります。
どんなに効率よく調査をしても1件あたり数日は必要ですので、どうしても職員1人で行う量には限界があります。
そこで国税局が出した答えが、確定申告体制での相談対応の短縮です。
実は10年前までは1月中から税務署全体で確定申告体制となり税務調査は中断してました。
(法人への税務調査を除く)
しかし、税務調査の日数を確保するために1月中に確定申告体制に入るのを止め、2月16日までは通常体制のまま確定申告対応をすることを上層部が決定しています。
これに関しては税務署に権限はありません。
各国税局が「かくて申告体制は〇月○日から」と指示をすれば、それに従わなければならないので、当然現場では例年通りの対応が出来なくなります。
その結果、来署した納税者に対応できるスペースと職員の人数は限られてしまうので、1月に税務署に行っても長時間待つことになるのです。
2:確定申告相談は限界まで待たせて次回来署する気を無くさせる
国税組織の究極の目標は確定申告の相談対応をしないことです。
全ての納税者が全て計算を行い、自主的に申告と納税までを完了させる
それが最終目標です。
理念自体は間違ったものではなく、相談時間の削減ができれば公務員の人件費削減に繋がるので国民としてもメリットがある話です。
しかし、現状の削減方法がおかしな方向で進んでいます。
確定申告会場で1時間2時間待つことがあるのですが、あれは意図的です。
税務署の人間は何も考えてないように思われますが、実は時間や日にちによって対応する職員の人数を調整しています。
もちろん確定申告の相談対応をしていないからといって休んでいるわけではありません。
提出された申告書のチェック作業もありますので見えないところでの確定申告関係の仕事に従事するためです。
しかし、もう一つの理由としては待ち時間を長くすることによって、
と納税者に勝手に思わせることが目的なのです。
国税組織としてe-Taxは推進してますが、「相談時間削減のためにe-Taxで申告してください」と来所した人に向かってアナウンスすると苦情の原因となります。
なので、納税者が自分の中で嫌な思いを整理し、来年は来署して申告したくない気持ちを作らせるのが長時間待たせる理由の一つとなっています。
3:e-Taxの普及で一番メリットがあるのは国税組織
e-Taxは10年以上前に私が税務署に配属された時からありますので、ある程度の月日は経過しています。
ですが周りにe-Taxで確定申告をした人がいますでしょうか。
あまり見かけませんよね。
しかし、国税局が公表してるデータだと、意外とe-Tax利用者多いです。
平成29年分の東京国税局に申告された所得税の申告書の件数の内、e-Taxを含むICTを利用した電子申告割合は67.3%にもなります。
出典:東京国税局(表7)ICTを利用した所得税等の確定申告書の提出人員
これだけ見ると普及しているのかなと思うかもしれません。
ですが、67.3%の内19.7%は税務署に来署してパソコンで申告した件数です。
更に、自宅等から電子申告をした47.6%には税理士が申告した件数も含まれています。
ですで、実際に個人で申告書を作成し、e-Tax申告をした人の割合は過半数にも満たないのが現実のe-Taxの普及割合なのです。
そこまでしてe-Taxを推進するのには理由があります。
それは国税組織にとってe-Taxでの書類管理が楽なのです。
(電子化進んでない行政が何を言ってるんだって話ですが)
国税庁HPで作成するe-Taxに関しては、自動計算になっています。
なので、数字の足し算引き算に間違いは生じません。
10年以上税務署に勤務していましたが、郵送を含む手書きの場合、結構足し算引き算の計算間違いが多いです。
当然訂正をしてもらう必要があるのですが、申告した人に連絡して再提出を促し、個別処理をしなければならないので2倍以上の時間が掛かってしまいます。
その手間暇を何とか削減したい。
これがe-Taxの目的です。
4:混雑を避けるなら2月中に税務署に行くこと
3月10~15日までの期間は絶対に税務署は混雑するのでオススメしません。
殺伐とした雰囲気の中申告をすることになるのでミスが発生しやすくなります。
個人的にオススメなのが2月20日前後の木曜日。
その理由についてはこちらの記事に書いてありますのでご覧ください。
また、税務署に来署する場合でも書類不備があれば申告をすることも出来ません。
一般的に必要な書類はあるのですが、各人で別途準備が必要な物もありますので一度税務署に連絡して確認をしてください。
その場合、8時30分又は17時直前に電話を掛けると比較的繋がりやすいですので、まずは朝一に税務署に電話を掛けてください。
(8時31分だと繋がらないと思った方がいいです)
最後に、納税の人は必ず申告期限内に申告書の提出と納税を済ませないとペナルティが発生しますので期限厳守してください。
しかし、還付申告の人に関しては申告をしなくてもペナルティは特にありません。
特例の制度によっては期限内が条件があるので注意が必要なのですが、年末調整漏れなどのケースでは最大5年間は申告猶予期間があります。
なので、税務署が空いている時期(確定申告期間以後)に申告しても特段の影響はありません。
(期限後申告には申告漏れがあった場合のデメリットもありますので心配な人は期限内申告をしてください)
ご参考になれば幸いです!