税務署には大きく分けて、6つの部署が存在します。
私は元税務署職員でしたが、資産課税部門に所属していました。
- 資産課税部門
- 法人課税部門
- 個人課税部門
- 徴収部門
- 管理運営部門
資産課税部門は6つの部署の中で、最も規模が小さい部門であり、もっとも特殊な部門。
ただ、特殊さゆえに税務署内では重宝される存在で、税務署を辞めたとしても仕事に使える知識が習得可能です。
そんな資産課税部門について、ご紹介します!
1:資産課税部門は『相続税』・『贈与税』『譲渡』を担当する
資産課税部門が担当する税金は、3種類です。
- 相続税
- 贈与税
- 所得税(※)
※所得税のうち、不動産と株式譲渡を担当
これらの税金の特徴は、毎年申告する必要がない税金であること。
- 相続税は、生涯1度あるかあるか・ないかの税金
- 贈与税は、財産をもらわなければ関係ない税金
- 譲渡所得は、不動産や株式を持っていなければ対象外
専門的な知識が必要で、税金の額も大きいのですが、単発の申告で終わるので、馴染みの薄い税金を扱っているのが特徴です。
⑴ 相続税は亡くなった人の財産に対して税金
相続税は、亡くなった人の財産に対して税金。
一番の特徴は、財産を持っている人が申告をしないこと。
財産を持っている人が亡くなった、初めて相続税の対象となります。
なので、申告するための期間が、相続開始日の翌日から10か月以内と長期間に及ぶ税金です
また、一つの申告書に相続人が連名で証明し、提出するのも相続税ならでは。
相続人が10人いれば、10人の相続人を相手に調査をしなければなりません。
⑵ 贈与税は財産をもらった人に対しての税金
贈与税は財産をもらった人に対しての税金。
贈与税の特徴は、特例制度を適用する割合が多いこと。
贈与税の申告をする人は、贈与税の特例制度だけのために申告する人がいます。
- 相続時精算課税制度
- 住宅取得資金等の贈与税の非課税制度
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度
- 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度
贈与は、贈与者(財産をあげた人)と受贈者(財産をもらった人)の合意があって成立します。
贈与税の特例があるから贈与をするケースが多いのですが、特例は申告をして初めて適用可能に。
しかし、財産をもらえば自動的に贈与税の特例適用ができると勘違いしている人が多いため、苦情に発展することも多々あります。
⑶ 不動産譲渡税は不動産の売却益に対しての税金
不動産の譲渡は、所得税の一つ。
譲渡所得は、不動産を売却した時の売却益に対して税金を計算します。
なので、利益が発生していなければ譲渡所得税を支払うことはありません。
しかし、相続した土地を売却する際には計算上利益が発生するケースがほとんどですので、申告と納税が必要になります。
ただ、不動産の売却自体の経験が無い人がほとんどなので、無申告になりやすい税金です。
⑷ 株式譲渡税は株式の売却益に対しての税金
株式の譲渡は、所得税の一つ。
株式には、上場株式と未公開株式の2種類ありますが、両方の株式の売却益は株式譲渡の対象となります。
上場株式の場合には証券会社が計算してくれることがほとんどですが、未公開株式の場合には納税者自身が計算しなければなりません。
未公開株式の売買は、会社を企業した人が売ることが多く、創業者が自社株を売却する際には億単位の利益になることも。
となると、いかに税金を安く済ませるかの対策が取られますので、法律知識が試される所得でもあります。
2:資産課税部門の仕事のやりがいポイント
資産課税部門の仕事のやりがいは、普段の生活で馴染みの薄い税金を取り扱うことです。
個人課税部門なら、年金受給者やサラリーマンが主な対象者です。
法人課税部門は法人を担当しますが、多くの法人は赤字なので事務処理が多いです。
しかし、資産課税部門が担当する税金は、富裕層の割合が多いのが特徴。
相続税の申告で、遺産が1億円以上は普通であり、10億円以上の財産を所持していた人の相続税の申告書を見る機会も多いです。
もちろん、相続財産が多ければ調査対象になることも多く、必然的に富裕層が対象に。
日常生活で富裕層の人と接する機会はありませんが、税務調査においては富裕層の人と対等な立場で会話することができます。
3:資産課税部門の仕事で辛いのは相手の嫌な事をすること
資産課税部門の仕事で辛いのは、相手の嫌な事をしなければならない点です。
相続税は、人が亡くなってから申告をする税金。
税務署が相続の調査をする際には、相続人に亡くなる前の状況を聞くことに。
税務署にとっては税金を調べるだけの作業ですが、相続人にとっては、亡くなる直前の事をを思い出さなければなりません。
特に配偶者の方に話を聞くときは涙される人も珍しくありませんので、調査をする側にとっても心苦しいです。
一方、相続人が相続財産を巡って争っている場合、相続争いに巻き込まれないように細心の注意をかけます。
相続争いは、想像以上に根深くデリケートな問題です。
税務調査の際に、全員が知っていると思って話したら、相続人の一人がその事実を知らないために苦情が入ることもあります。
4:資産課税部門の職員に向いている性格
資産課税部門の職員に向いている性格は、ズバリ共感能力が低い人です。
共感能力が高い人は、相手の感情を理解してしまうため、税務調査するのが苦しくなります。
私は共感しやすい性格だったので、税務調査では大変苦労しました。
実際、税務調査の影響で身体を壊すことになりましたので。
参考:税務調査をする立場が嫌で心が壊れた職員【税務署職員歴史3】
共感能力が低い人は、税務署の仕事を淡々とこなせるので、やりがいが持てる部分でもあります。
ただ、税務調査を受ける側にとっては、そのような職員は不人気ですが。
5:資産課税部門の知識はライター業には向いてる
税務署の中で、資産課税部門の知識はライター向きと言える知識です。
税務署を退職後、現在はブロガー兼ライターとして活動していますが、資産課税部門で培った知識は役に立っています。
正直、相続税や贈与税の法律を日常生活では使う機会はありません。
しかし、ライターであれば、相続税や贈与税の需要はあります。
なぜなら、税金の特例などは知っているライターは少なく、単価も1文字1円以上が普通だからです。
税務署の部署は、強く希望すれば変えることができます。
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ご参考になれば幸いです!