税務職員は高卒採用です。
6月に受験申し込みがあり、採用一次試験は9月となります。
無事、税務職員として採用された場合、最初に待ち受けるのが、1年間の研修期間。
税務職員採用者は、国税庁の研修施設である税務大学校で全寮制で基礎知識を身に付けることになります。
私は、その税務職員として採用されてから12年以上働いていました。
税務職員としての略歴は、このようになります。
税務大学校(東京研修所)
⇓(1年間)
当初配属税務署
⇓(3年と3か月)
1回目の転勤税務署
⇓(2年間)
2回目の転勤税務署
⇓(4年間)
3回目の転勤税務署
⇓(2年と1か月)
退職
税務署に配属されてからも、大変でしたが、私は研修時代が1番嫌な時期でした。
税務大学校自体の仕組みについては、こちらの記事にまとめてあります。
税務職員として、採用された場合に感じること・考えることについて、ご紹介していきます。
1:税務職員の式典では怒られ、公務員として奉仕することを署名で宣言する
私は高校を卒業したら直ぐに働きたいと思ってましたので、大学進学の選択肢はありませんでした。
当時は大学行って何を勉強するのと思っていましたし、実際今でも大学で学べることに興味がありません。
就職一択だった私ですが、就職先として公務員を選んだのは「楽そうだから」と、ありきたりな理由です。
地元も市役所で働きたかったのですが、求人がなく、複数受けた公務員で合格した一つが税務職員でした。
採用された当時は税務署の仕事をほとんど理解していませんでした。
公務員に就職したからには、「平日は我慢して働いて、休日ゆったり過ごし、そして定年まで勤められればいい」などと仕事を考えていて、仕事の内容に特に重きは置いてませんでした。
しかし、世間的な「公務員=楽そう」が変わったのは、税務署で働くようになってからです。現実は違いました。
高校を卒業し、4月から晴れて公務員となる当日、東京某所で採用の式典がありました。
その採用式典が行わるリハーサルで研修生となる採用者が税務大学校の校歌を歌ったのですが、歌いだした瞬間に、
「声が小さい!やり直し!」
と怒鳴られ、何度も繰り返しました。
今考えれば一喝するためのパフォーマンスだったと思います。
ですが、当時の私はその時点で「なんで高圧的なんだ」と一気に萎え、そして「あぁ、無理かも…」と思いつつ一生懸命に校歌を歌いました。
式典が終わると、研修所へ向かいます。
研修所で最初に行うことは、宣誓書に署名をすることです。
宣誓書とは、「社会全体の奉仕者として職務に専念することを誓います!」と書かれた文章です。
もちろん署名するしかないのですが、署名した途端に「宣誓書に署名したんだから、違反する人間は辞めろ」と圧を掛けられました。
高卒した私は、その圧が怖くて怖くてしょうがなかったです。
ちなみに、宣誓書の署名は法律上行わなければいけない行為です。
職員の服務の宣誓に関する政令内閣は、国家公務員法(昭和二十二年法律第百二十号)第九十七条及び附則第十三条の規定に基づき、この政令を制定する。(服務の宣誓)第一条 新たに職員(非常勤職員(国家公務員法第八十一条の五第一項に規定する短時間勤務の官職を占める職員を除く。)及び臨時的職員を除く。以下同じ。)となつた者は、任命権者又はその指定する職員の面前において別記様式による宣誓書に署名して、任命権者に提出しなければならない。別記様式
宣誓書 私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。 年月日 氏名
2:税務大学校の研修生活は手抜きできる職員ほど馴染める
税務大学校の指導は厳しいです。
現場に配属されても大丈夫な精神を作るためには必要な指導もあります。
実際、理不尽な納税者なんて山ほどいますので。
それでももう少し違ったやり方はあったかと疑問は残ります。
その中で特に嫌だったのが、事あるごとに集団で罵倒されることも普通であり、1人のミスを連帯責任で全体として怒鳴られることです。
連帯責任を感じること自体は悪い事ではありません。
むしろ連帯責任を持つことは公務員としては必要です。
ただ、研修中の講義前に学生気分で騒ぐ奴が必ずいるのですが、毎回毎回、教育官に怒鳴られました。
全員に向けて。
最初の1,2か月は素直に応じますが、1年間の長期研修をしていると、どうしても慣れや油断が生じます。
となると、また毎回講義前にガヤガヤ騒ぐグループが存在し、教育官に指導されます。
って真面目に思ったほど、馬鹿の一つ覚えもせずに騒ぐもので、その度に全体指導があるのには本当に嫌気がさしていました。
ですが、怒られる原因となった職員ほど真に受けずにスルーする能力があるので、実はちゃらけている人は公務員向きな性格です。
公務員の仕事は、
- 非効率
- 年功序列
- 理不尽
の3点に尽きます。
非効率にイライラをせず、
年功序列に対しても陰口叩くだけでストレス解消し、
理不尽に対しては他人の事のようにスルーする。
もしかしたら、その能力を向上させるために研修システムがあったかもしれません。
3:税務大学校の同期同士の空間を良いと感じないと税務署職員としては大変になる
仕事とプライベートを分ける派・分けない派で分かれます。
公務員時代の私は完全に仕事とプライベートを分けるタイプの人間で、完全なプライベートである同僚は皆無に等しかったです。
そんな私にとって、公私混同の税務大学校時代はかなりの苦痛の塊でした。
本格的に体調を崩したのは職場に配置されてからでしたが、そんな時でさえも長期研修にはもう二度と経験したいとは思いませんでした。
(税務職員採用の場合には出世試験に合格すると1年間の長期研修を受けます)
確かに1年間同じ空間を共有した同期とは繋がりが強くなるので、偶然に会うと自然と会話が弾んだことはありました。
ですが、休日も一緒に行動するのは考えられません。
それは、私がシンプルに仕事が嫌いだったからです。
仕事で繋がった人間関係でプライベートも過ごすとプライベートも仕事の人間になります。
仕事の話以外にもたわいもない話もしますが、共通する話は仕事の話です。
「どんな調査やった」
「進捗状況どう」
「今事務年度の職場環境っていい感じ」
それらの話が自分の支えとなることもありますが、そんなのは数か月に1度で十分。
もちろん、地方から東京へ進出した人は知り合いが少ないので仕事仲間=友人の関係になるのは理解できます。
ですが、私は研修が終わると地元に戻ってプライベートで絡むことはほとんどありませんでした。
平たい話、休日くらいは仕事から意識を遠のけたかったのです。
でもそんなスタンスで行う税務署の仕事を40年も続ける自身もありませんでした。
4:税務職員として働き始めた時の感覚が大きく変わることは無い
研修を終え、税務署に配属になってから数年後にお会いした高校時代の先生に掛けてもらった言葉です。
その先生も30歳までは本当に苦しかったけれども、30歳を過ぎたら仕事の楽しさが少しずつわかってきたとのことでした。
確かに、仕事の楽しさは仕事を知るほどわかってきます。
将棋もルールがわからないとつまらないですし、スポーツも理解すればするほど細かいプレーで興奮することができます。
私も税務署時代には、税金相談で特例適用のアドバイスや税金が発生しない説明をした時に喜ぶ相談者の顔を見ると嬉しくなりました。
しかし、残念ながら、相談で喜んでもらうことは本来の税務署が持つべき顔ではありません。
税務署は税務調査至上主義です。
職員は税務調査してをしてナンボの世界です。
完全にアウトローの道に進む人は別として、普通の職員であれば100%避けて通れません。
ですが、私は税務調査をするのが嫌いでした。
嫌いなものは、30歳になっても嫌いなのままでした。
どんなに好きなものがあっても、苦痛となる時間があれば私は嫌です。
自分の好きな事の為に我慢は出来ますが、自分が好きでもないことに対して我慢するのは無理でした。
税務署の仕事を否定するつもりはありません。
ですが、仕事が合う・合わないは絶対に存在しますし、それを自分に当てはめる必要があります。
研修所での1年間の研修を終えたら、税務署に配属されます。
税務署1年目についてはコチラの記事なります。
恥ずかしながら、私は税務署の職員としては、かなり無能だったと思います。
しかし、無能な人間も10年以上働けたので、意外と悪くなかった職場かもしれません。
ご参考になれば幸いです!