新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、令和元年分の確定申告期間が令和2年4月16日に延長になりました。
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- 消費税(個人)
- 贈与税
確定申告手続きをまだしていない人にとっては、1か月間の猶予期間が与えられてホッとしているかもしれません。
ただ税務署職員からすると、申告期限延長の余波は最大7年間続きます。
1:申告期限延長で相談対応日数が増加する
申告期限が延長したことにより、確定申告相談対応を行う日数が増加します。
令和2年2月27日に国税庁が公表した内容によると、申告期限は令和2年3月16日から1か月先となる4月16日となりました。
つまり税務署職員は、1か月間追加で確定申告の相談対応をしなければなりません。
申告期限が延長しても、提出される申告書の件数は変わりませんし、1日あたりの来署者数も減少するでしょう。
ただ来署する人数が減っても、相談する職員数は同じですので、単純に相談事務が1か月分増加することに。
となると影響は、税務調査など他の事務に表れてきます。
2:確定申告期の短期アルバイトの契約期間が終了する
確定申告期間中は、申告書の補助として短期アルバイトを大量に採用しています。
相談会場はもちろんのこと、窓口や郵送で郵便で提出される申告書を仕分けるのも仕事です。
また通常の確定申告の申告期限は、3月15日までで。
おおまかな3月まで確定申告処理は完了しますので、3月末で短期アルバイトは終了することが多いです。
しかし申告期限が1か月延長されたことにより、確定申告の山が1か月後ろ倒しになります。
となると、申告期限前後の事務処理でアテにしてた短期アルバイトが不在の状況で、税務署は、確定申告事務を乗り越えなければなりません。
3:4月から行う税務調査が行えなくなる
税務署は7月から6月を1年間として活動します。
所得税を担当する個人課税部門であれば、
- 7月~12月⇒税務調査
- 1月~3月⇒確定申告対応
- 4月~6月⇒税務調査
この流れが一般的です。
しかし確定申告期間が1か月延長すると、予定が1月後ろ倒しになり、本来行う予定だった税務調査ができなくなります。
また税務署は7月に定期人事異動があり、職員の1/3転勤します。
そのため6月から7月への後ろ倒しはできないため、3か月分の税務調査を2か月に圧縮して実行することに。
4:更正の請求や延滞税の計算も例外適用に
確定申告した内容が間違っている場合、申告期限から5年間はやり直しが可能です。
そのため3月15日が申告期限のケースでは、5年後の3月15日まで訂正の申告(更正の請求)ができます。
(通常『訂正申告』は期限内に申告書を再提出した場合をいいます。)
一方申告期限が延長した場合には、その分だけやり直し可能期間も後ろにずれますので、令和元年分だけ、期間が後ろ倒しになり5年後まで認識していなくてはなりません。
また延滞税の計算も、申告期限の翌日から日割りで計算しますので、申告期限が延長になったことを忘れていると、延滞税の計算を間違えることに。
令和2年中であれば、間違えることはほとんどありませんが、税務調査は1年後2年後に行います。
そのため結構計算ミスが、発生しやすくなるのです。
5:今後の政府の対応一つで税務署の仕事は増加する
私は東日本大震災時は、現役の税務署職員として対応していました。
所得税はもちろんのこと、相続税の申告期限も延長されたため税務署内の処理が大変でした。
また税務署はまだまだアナログ社会です。
そのためチェック作業は手作業が多く、申告期限延長による事務量は想像以上に多いです。
もちろん申告期限延長は、必要な措置として行われましたし、税務署の仕事は一般の方々には直接関係ありません。
ただ一方で、税務署内部の処理も大変であることを少し知っていただければと思い、書かせていただきました。
ご参考になれば幸いです!