2020年初頭から問題となっている、新型コロナウイルス(正式名称を「COVID-19(coronavirus disease 2019)」)の対応で、厚生労働省が批判を浴びています。
私は元税務署職員なので、財務省管轄の人間でしたので厚労省の職員の待遇面はわかりませんが、現場で一生懸命働いている職員が可哀想だと率直に思います。
なぜなら一生懸命働いても、官僚の発言一つおかしかっただけで、ひとまとめにバッシングされるからです。
しかし、公務員バッシングで損をするのは国民。
なぜならバッシングが酷くなるほど、志を持った人が公務員になろうとは思わなくなるからです。
1:バッシングされる職場に働こうとは誰も思わない
就職先を決める時、会社の職場環境も大事ですよね。
社内はもちろんのこと、周囲からの評判も意外と重要視します。
また今は会社の評判や知名度、インターンシップを利用した現場経験など、職場を知る手段は多々あります。
そんな選択肢や調べる手段がある中、わざわざ社会的にバッシングが強い職場で就職しようと思いますでしょうか?
普通思いませんよね。
私は何も考えずに高校卒業後、税務署職員になりました。
ただ、今もう一度就職先を選べるのであれば、公務員は選択しません。
なぜなら毎日罵声を浴びる職場は、苦痛でしかないからです。
2:バッシングの生の声を浴びるのは現場のノンキャリ職員
マスコミと公務員の間には利害関係がありませんので、マスコミは一方的に公務員を批判できます。
そのためニュースに困ったら公務員をネタにしますし、公務員が反論コメントを出すことも、裁判で訴えることもほとんどありません。
となると当然、一方的な情報が国民に伝わりますので、公務員に苦情を入れる人も出てきます。
税務署であれば、確定申告期間中は罵声が飛び交うことがしばしばありました。
また税金の調査を行う際には、「○○ではあんな無駄遣いしているのに」と税務署とは機関が違う公務員の不祥事をネタに苦情を言ってくるケースも、職員のあるある話。
もちろん不祥事を起こす公務員が一番いけないのですが、その批判の声を受けているのは、まじめに仕事をしている現場の職員です。
割合で考えれば95%以上の公務員は何も不祥事を起こさず、仕事をしています。
ただ5%の公務員が仕事で怠慢があるがために、まじめに働いている職員が批判を浴び続けいるのが現状です。
3:待遇がいいだけの公務員に優秀な人材は集まらない
公務員は、犯罪をしなければクビになることはありません。
また給料やボーナスも一定水準以上確保されているので、待遇面では悪くないでしょう。
ただそんな待遇面だけをみて、試験を受けた学生が優秀とは限りません。
給料面で考えれば、外資系の方が圧倒的に上ですし、自分の実力に自信があるならなおさらの事。
そうなると、一昔前なら官僚希望だった人が、今は外資系に引き抜かれている状態です。
実際、公務員の人気は下がっており、2019年度国家公務員採用総合職試験の申込者数は、総合職試験全体で17,295人と昨年度に比べ11.8%減少しています。
競争力が下がれば、その分受験者の質も下がります。
少子化などの影響も考えられますが、公務員が不人気な業種になりつつあるのは間違いないでしょう。
4:質の悪い公務員の被害を受けるのは国民
(言い方は悪いですが)公務員の質が下がった場合、最も被害を受けるのは国民です。
- 実力がある学生は公務員に就職しません。
なせなら公務員の職場は働く価値がないので。 - 真面目な人は公務員を退職します。
なぜならバッシングに耐えられる心を持ち合わせていないので。 - 自分勝手な職員は公務員に残り続けます。
なぜなら公務員より待遇がいい会社に転職できないので。
今働いている公務員が、全員ダメな職員だとは思っていません。
むしろ一定数の職員は優秀な方々です。
しかしそんな職員も一律にバッシングを受ける環境が公務員であり、ダメな同僚に足を引っ張られることが目に見えている環境に、賢い学生はわざわざ就職したいと思いません。
その結果、対応の悪い公務員がどんどん増え、そして苦情件数が増加する悪循環に陥ります。
5:官僚に自浄作用を期待するのが酷
官僚の対応が批判されますが、官僚自身に自浄作用を期待してはいけません。
官僚にとって、自ら組織改革をするメリットがありませんので。
会社で働いている人が、自分の待遇が悪くなる環境を自ら作ることはしませんよね。
言いたいことはわかります。
ただ公務員になる人も、学生時代までは同じ境遇で育ってきた子どもです。
公務員になった瞬間、自己犠牲精神を持てるほど、公務員の教育制度は充実してません。
また身を削る改革を実行しても、どこからも評価されないのも理由にあります。
例えば公務員の給料を下げた場合、
- 身内の公務員は「給料下がった」と批判
- 国民は「公務員だから当然」と評価しない
そんな状況で、誰が自分の待遇が悪くなる行動をするでしょうか。
実行できる人は、正義感が溢れる人か自分の理想を実行したい人のどちらかです。
ただ残念ながら、正義感が溢れる人が官僚のトップになれていれば、もっと日本は上手くいっています。
6:本来政治家が公務員の組織を立て直すべき
当たり前ですが、公務員自身で自浄作用が働かない以上、政治家が組織改革を行うべきです。
ですが政治家が、公務員を立て直している姿は見たことがありません。
少なくても、私が公務員として働いてた12年間で、明らかに業務改善が行われた形跡はありませんでした。
むしろ不祥事が起こるたび確認作業が追加されたため、無駄な事務だけが増えていきました。
なので従来の政治家に期待する方が、非現実的です。
7:政治家を選んでいるのは国民だから、公務員の質は国民が決めている
「今の政治家は酷い」と言っても、それを選んでいるのは国民です。
つまり、
- 国民が政治家を選ぶ
- 政治家が法律を決める
- 法律内で公務員が働く
- 公務員の働きに納得できない国民から苦情が発生する
このループが永遠と続いています。
なので公務員の質が悪いのは国民の責任であり、国民がまともな政治家を選任すれば公務員もしっかりと働きます。
私はもう公務員を辞めていますので、公務員を擁護するメリットはありません。
ただ自己満足で、公務員をバッシングしている人も擁護できません。
本当に公務員や官僚を何とかしたいのなら、選挙に行ってまともな政治家を選びましょう。
それが最も現実的に公務員の働き方を改善する方法です。
ご参考になれば幸いです!