全国の公務員採用試験数を合計すれば相当の受け入れ口はありますが、いずれの公務員試験も年1度しか実施しません。
春から夏にかけて公務員採用応募期間が始まり、秋口に試験、そして晩秋に可否判定が発表されます。
公務員にも転職者採用試験のような社会人採用枠がありますが、採用の流れについては通常の採用試験と同じです。
ですので、民間からの転職を希望される人は1年単位で公務員を目指すことを考えなければいけません。
年齢上限は国家公務員や地方公務員によって違いますが、基本的には30歳までを一つの区切りとして考えてください。
30歳以上でも採用枠は存在します。
ただ、新卒採用と異なり受験者全員がその職に就きたいと考えて採用試験に臨んでいます。
ですので今回は、公務員への転職を考えた場合における採用条件と注意点についてまとめました。
よろしければ、続きをご覧ください。
1:20代であれば新卒と同じ採用試験を受けること
公務員は国家公務員と地方公務員に分類することができます。
職種によって試験問題は変わりますが、国家公務員であれば採用条件はほとんど同じであり、地方公務員に関しては地方自治体によって多少違いがみられます。
ですので、最初に全体像を把握していただくために、国家公務員のサンプルで国税庁、地方公務員のサンプルで千葉県職員の採用条件についてご説明します。
まず、国家公務員である国税庁の場合、大卒程度の採用枠として国税専門官があります。
平成30年度国税専門官採用試験
受験資格
- 1.昭和63年4月2日から平成9年4月1日生まれの者
- 2.平成9年4月2日以降生まれの者で、次に掲げるもの
- (1)大学を卒業した者及び平成31年3月までに大学を卒業する見込みの者
- (2)人事院が(1)に掲げる者と同等の資格があると認める者
国税庁HPより
平成30年度の場合、昭和63年は30歳に達する年齢が上限となってりますが、年齢上限が変わる場合もあるので実際に採用される年度に確認をしてください。
(私の採用期の国税専門官は28歳が上限でした)
一方、地方公務員の千葉県職員の採用枠を見てみますと、国家公務員とは少し条件が異なります。
千葉県職員採用(平成30年度)
上級試験(大学卒程度)
試験職種と主な受験資格
試験職種 主な受験資格 一般行政A 昭和63年4月2日から
平成9年4月1日までに生まれた方一般行政B 昭和58年4月2日から
平成6年4月1日までに生まれた方一般行政A・B以外の職種 昭和58年4月2日から
平成9年4月1日までに生まれた方千葉県HP参照
※一般行政A・B以外の業種とは獣医師などの専門職です。
一般行政A・Bとはあまり聞きなれない言葉ですが、千葉県HPの一般行政BについてのQ&Aではこのように説明されています。
Q.「一般行政A」と「一般行政B」の違いは?
一般行政Bでは、1次試験にて専門試験を実施せず、2次試験にて、1次試験時に作成した「自己アピールシート」を基にした「プレゼンテーション」を含む個別面接を実施します。
一般行政A・一般行政Bの受験資格は、年齢要件のみ異なります。
主な内容は次のとおりです。
一般行政A 一般行政B 受験資格(年齢) 21~29歳※
24~34歳※ 1次試験 教養試験 専門試験
論文試験(2次試験として評価)
教養試験 論文試験(2次試験として評価)
自己アピールシート作成(2次試験で使用)
2次試験 個別面接 集団討論
適性検査
個別面接(プレゼンテーションを含む) 集団討論
適性検査
千葉県HPより参照
年齢以外での受験資格の相違はありません。
ですが、年齢条件や試験内容を鑑みるに、一般行政Bは中途採用をイメージしていることがわかります。
また、千葉県職員の平成29年度の採用人数は一般行政Aが100、一般行政Bが20と一般採用枠の方が大きいのです。
2:社会人採用枠は受験者全員が公務員になりたい人達
公務員への中途採用をイメージした採用試験は『経験者採用試験』と呼ばれています。
採用数だと新卒採用者よりも圧倒的に人数は少なく、平成29年度の国家公務員の経験者採用試験は以下のようになっています。
※ 見えにくい場合はこちらをご参照ください。
税務署職員の採用人数が異様に多いですが、それ以外の職種の採用枠は極少数なのがわかります。
また、最終合格者の人数=採用人数ではありません。
転職者であっても採用辞退する人がいるため実際に公務員となる人はもう少し少ない人数となっています。
一方、地方公務員の場合も同様で中途採用者の人数は少ないです。
先ほどの千葉県職員の一般行政A・Bでは採用人数に大きな差がありました。
平成29年度の合格倍率は以下のようになっています。
※ 合格倍率は第1次受験者数に対しての最終合格者数です
採用予定人数と最終合格者の人数が違いますが、採用試験に合格しても複数の企業や公務員の採用試験に合格している人もいますので、辞退者数を勘案した人数です。
一般行政Bは合格者24人に対して予定数は20人であるため試験に合格した人のほとんどがそのまま公務員の職に就くと想定しています。
逆に一般行政Aは採用予定人数の100人よりも80人以上多く合格者を出しています。
これは、複数の採用試験に合格した人など約半数が辞退することを見込んでいます。
大学生の場合就職先を決める場合に1つの企業だけしか試験を受けない人はいませんよね。
逆に転職する人が同時に複数の採用試験を受けることは考えにくいです。
なので、採用試験の受験者の人数以上に転職採用試験はよりシビアになっています。
3:公務員に転職しても給料は上がらない
国税庁経験者採用試験では採用者の階級が国税調査官級となっています。
国税調査官とは税務署では下から2番目の地位となります。
税務署の主な役職
事務官
⇓(26~27歳くらい)
調査官
⇓(早ければ30歳半ば)
上席調査官
⇓(最短で40前半)
統括官
⇓(1割未満)
副署長
⇓(一握り)
署長
国税調査官は民間での係長クラスになるのですが、高卒採用された場合には26歳くらいから国税調査官に昇進することができます。
一方、経験者採用試験に合格した職員は、採用時の能力(経歴や資格)により給料は変化しますが、35歳で採用された場合は30歳くらいの給料からスタートすることになります。
社会人採用枠で公務員となった職員と同じ職場になったことがあるのですが、その際転職者の年齢は35歳でした。
私は当時30歳でしたが、階級的には私の方が上の扱いでした。
(同じ国税調査官でも経験年数によって上下はあります)
また、転職者の方の前の職場は不動産関係の会社だったのですが、給料は減少したと回答されていたので、公務員=高給取りではありません。
なお、通常の税務署では残業をそこまでしないので給料は基本給のみとなりますが、総務課や国税局勤務になる人が残業が多くなるので、その分年収も増加します。
4:公務員独特の風習があることを前提に採用試験に臨む事
公務員に転職する方に注意していただきたいのが、公務員特有の風習です。
民間から転職された方は口を揃えて「公務員には独特の考え方がある」と言っていました。
公務員の仕事はまだまだ非合理的な作業が多いです。
民間なら削減対象となるような事務を進んで行ったり、何かと理由をつけて新たな(無駄な)業務を増やします。
そんな非合理性の中で仕事をすることは覚悟してください。
ただ、そうは言っても新卒採用の職員と比べ、民間からの転職者の離職率は少なかったです。
私の知る限りでは、民間からの転職者は誰も離職をしていませんでした。
(新卒者は1年目で1割くらいは辞めます)
非合理的な仕事は多いですが、それを差し引いても確実な給料と職場環境は整っているのが魅力的なのかもしれません。
営業などもありませんので、成績が上がらなくてもクビになることはありません。
民間企業で不満に思っていたことが公務員に転職することで解決するのであれば転職も選択肢に。
しかし、公務員からの再転職には世間の目は厳しいので十分に検討を重ねてください。
ご参考になれば幸いです!