税務署の組織

国税局・税務署にとっての平等な課税の空想

天秤

 

「税金これ以上増税するな、議員の給料を下げろ!」

 

気持ちはわかりますが、国会議員の給料を下げたところで財政の影響は皆無です。

集める分母が大きければ金額も多くなるので、議員定数の削減や給料を下げたところで小細工する可能性が高くなるだけなので税収が増える効果はありません。

(かといって、無駄遣いOKではありませんが)

1000人の議員報酬を10万円削減したら1億円ですが、国民一人10円増税したらそれだけで10億円。

増税の対象も同様で、増税の対象となる科目によって被害を被る人は変わって来ます。

 

基本的には分母が小さい(批判の声が少なくて済む)富裕層が狙われるわけですが、富裕層のみ増税しても海外へ出国されたら元の子もありません。

逆に消費税のように全員から徴収しようとすると大反発が発生するので、軽減税率などの費用対効果の薄い措置を実行しようとします。

 

税金はどこから徴収するのかが重要です

それは税務調査についても同様で、誰を対象に調査をするかが大事になってきます。

とはいえ、税務署の実情としては、満遍なく調査が行えているとは言い難い現状も。

ですので、今回はその辺りの内部事情についてお話していきます。

 

1 富裕層を重点的に調査することは平等ではない

宝石

 ⑴ 富裕層の調査は税金の額が大きいから調査が映える

調査件数で言えば富裕層が特段多いわけではありませんが、富裕層の人数に対しての調査割合で言えば圧倒的に高いです。

皆さんの周りに税務調査が受けた人はいたでしょうか。

サラリーマンの家庭や年金暮らしの方が多いので、ほぼ税務調査を受けたことはないと思います。

逆に、富裕層になると税務調査を受けたことのある人の方が少ないはず。

「私はまだ調査受けたことないんですよ~」って人は数年以内には調査が入る可能性があます。

 

富裕層が調査をされる理由としては、富裕層=脱税ではなく、申告している金額が大きいから。

冒頭の話ではありませんが、富裕層10人から一人1000万円を集めるよりも、一般層1万人から10万円を集めた方が多くの税金が集まります。

でも、「1万人から10万円集めた」ってよりも、1人の脱税金額1億円を取りましたって方が同じ税務調査でもインパクトが違いますよね。

 

その印象を大事にするために富裕層を調査しているのが第一の理由です。

 

 ⑵ 見せしめのために行う調査は存在する

お巡りさんが街中でよくスピード違反の取り締まりを行っていますが、「なんでこんな所でやってんの」って場所で取り締まったりしていますよね。

普段からスピード違反をしないように注意する部分もありますが、それ以上にその場で駐車して指導している場面を見せることに効果があります。

 

税務調査も同様です。

新しい法律改正や制度の実施の場合、その制度が適正に運用されるためには最初が肝心です。

例えば2017年に話題となった仮装通貨も、現在キッチリと調査を行っているはずです。

『億り人』(おくりびと)という言葉がある界隈では流行しましたが、本当の富裕層はそんなバカな発言を自らはしません。

仮装通貨の利益も当然確定申告の対象ですが、申告しなければ無申告として所得税の最高税率40%+最高税率×40%が重加算税として加算されます。

 

・利益1億円を無申告だった場合(雑所得)

1億円(利益)×45%(税率)=4500万円(本税)

4500万円×40%(重加算税税率)=1800万円(重加算税額)

4500万円+1800万円=6300万円

6300万円は国税だけです。

住民税を合わせると、1億円の利益があっても7,8割は税金と化します。

なので実情は『億り人』ではなく、『2000万』しか残りません。

(単純な無申告なら重加算税ではなく、無申告加算税(15、20%)が賦課されます)

 

国税庁・国税局としてはこんなに美味しい(簡単で確実な)税務調査はないはず。

仮装通貨の無申告者の取り締まりを行うことで、税務調査の見せしめ+確定申告の促進を促すことができます。

 

 ⑶ 富裕層の方が圧倒的に真面目

富裕層の脱税騒動はマスコミの騒ぎ、それについてネットでも話題になりますが、富裕層の方が圧倒的にキチンと申告をしています。

超富裕層の方や大企業になると、100万円単位はごく普通だったりするので、普段から100万円を意識して活動するのが酷な場合もあります。

それよりも稼げる人は100万円を意識するのではなく、稼ぐ方に意識した方がその10倍100倍を稼ぐことができます。

結果として納税額も多くなるので(富裕層にとって)小さい部分にケチ付けるのはよくありません。

 

逆に富裕層を批判するのであれば最低限の知識は自分自身で身に付ける必要があります。

何でもかんでも「政府が~」、「大企業が~」といっても所詮は他力本願

最後は自分の知識を駆使して収入を増やすしかありません。

(もちろん改善すべき点は腐るほどあるので、どちらか一方ではなく両方とも向上した方がベストってことです)

 

 

2 取りやすいところ調査するのが平等なのか

TAX

 ⑴ 数字を求められたら取りやすい納税者を選択する

公務員は予定計画が大好きです。

税務署は7月から6月を1年間(事務年度)として活動するのですが、その作業計画に1か月間を費やして国税局に報告をしなければいけません

もちろんそんな計画は意味が無く、たまに国税局の一声で追加の作業が入るので、計画が根底から覆ることも普通です。

 

そんな作業計画ですが、その一つに調査件数ノルマがあります。

歩合制ではないので、ノルマをクリアしても何もありませんが、一応職員評価にはつながります。

(微々たるものですが)

 

しかし、ノルマにしてもセールス販売と違い税務調査の対象者をコロコロ変更はできません。

納税者が税務署の考えに難儀を示す場合には調査に膨大な時間を要します。

では、それを防ぐためにはどうすればいいのか。

そう、取りやすい場所(人)から取るのです。

 

具体的に「取りやすい人って何なのか」って話はなしですが、

取りやすい所⇒誤っている箇所が確定している

それだけです。

 

例えば、申告漏れが特例適用不可が該当します。

どう考えても誤りとわかるケースで且つ関与税理士がいる場合には、極端な話、電話一本で税務調査が終わる場合もあります。

それが良いのか悪いのかは不明です。

誤りは誤りなので、指摘しなければいけませんので。

ですが、実際には「もっとやった方がいいだろう」と思う案件もあったりするのが悩ましいのが現場の悩みです。

 ⑵ 費用対効果の考え方は税務署にも存在する

税務署は税金を取り扱っている職場なので、他の公務員と比較するとまだ費用対効果の考えは高いです。

(他の元公務員の人とお話する機会があったのですが、お金の使い方が酷かったです(苦笑))

 

税務調査にしても本来全員を対象に調査をしなければいけません。

ですが、現実問題として人員的に全てを行うことは不可能です。

「申告しなくても全部はわからないでしょ」と質問されても、税務署職員としては「そうですね~」と回答しませんが。

そもそも、そんな考えの人がいるから調査をしなければいけないので

 

電子化が進めばもっと効率的に税務調査が可能になるかもしれませんが、現実的には申告漏れが多々あります。

だとすれば、国税局としては限られた調査件数でいかに実績(税額)をあげるかがポイントとなります。

10件の調査で1件10万円の税金漏れがあっても100万円です。

それなら調査件数が5件でも1件50万円の申告漏れを把握した方が効率的です。

調査を受ける側としては嫌だと思いますが。。

ですが、費用対効果を考えるとそうなる部分は出てきます。

 

 

3 適正公平な課税と何なのか

cost

 ⑴ 真面目な人ほど損をしている現実はある

ぶちゃけた話、申告をした人の内容誤りを見つけるのと申告しない人の申告漏れを把握するのであれば前者の方が圧倒的に楽です。

後者については元々納税意識の低い人もいたり、税務調査に非協力的な人も多いため時間が掛かります。

また、無申告者の人が多額の申告納税額があるわけではありませんので、税務署としては当たり外れが多いのが実情です。

 

そうなってくると、割に合わないのが申告をしている人。

誤りがあればそれを訂正し、適切に申告した人との区別の為に加算税(過少申告加算税)を賦課しなければいけません。

でも、同情できる部分あったり、少々やりづらいところもあります。

 

無申告の場合の方がペナルティーの税率は高く設定されいますが、リスクを承知で申告しないことを選択する人がいるのも現実。

もっと改善しないといけません。

 

 ⑵ 電子化による方法が唯一の平等公平を踏む

元税務署職員として一刻も早く電子化の導入は必要です。

高齢者が等々と言っていますが、電子化による納税漏れ防止効果は相当に大きいです。

マイナンバーについても申告漏れの把握に繋がりますので、(気分的に嫌なのはわかりますが)日本全体でもっと協力的になってもいいような気がします。

 

電子化反対のメリットは脱税のしやすさです。

現金商売であれば簡単に売上除外できますが、クレジットカード決済だけになれば売り上げを誤魔化すことができません。

クレジットカード導入のコストも現金管理のコストを考えればそこまで高くないはず。

政府がキャッシュレス化を進めるのには同意します。

 

 

4 苦情は申告手続きをしてから言うべきもの

 

国税局が裁判をする例は多々あるのですが、その中でも争いが絶えないのが競馬の馬券の経費の扱いです。

競馬の的中配当は一時所得に該当するのですが、必要経費なるのが原則当たり馬券の購入費のみです。

 

1万円×100レース馬券を購入し、1レースだけ倍率100倍の馬券が当たった場合

(1万円×100倍=100万円)

・本人のお財布事情

収入100万円ー経費100万円=利益0円

 

・税務署(一時所得)の考え方

収入100万円ー経費1万円(当たり馬券の購入費のみ)

利益99万円

 

この例だと100万円ですが、億単位で馬券を購入している人は死活問題です。

なので、納税者側は全ての馬券を経費に入れるために馬券の所得は雑所得と主張し、一時所得と主張する国との裁判で争うようになりました。

詳細は避けますが、いくつかの裁判では納税者側が勝ち、雑所得として最高裁に認定されているケースが出てきました。

 

確かに当たり馬券のみを経費だけだと、計算上の利益が多額になるため、税金を支払うことはできませんし納税者側の主張も理解できます。

ただ、申告をしていて税務調査により否定されたので裁判を起こすのは理解できますが、申告していない(する気もなかった)のによく国税局の主張はヒドイと一方的に言えるなと思ってました。

(2015年3月10日最高裁判決のケースは納税者は無申告)

 

税務署の見解も異論があることもあります。

部内の人間でも「この取り扱いはヒドイな」と感じたこともありました。

 

でも、主張はキチンと確定申告をしてしましょう。

脱税をして、脱税を指摘された後に自らの意見を通そうとするのはさすがにズルいですので。

 

 

ご参考になれば幸いです!