税務署職員生活 PR

元税務署職員の相続税担当者が著名人が亡くなった際に思うこと

花
記事内に商品プロモーションを含む場合があります

Twitterで著名人の名前がトレンド入りしていると、不祥事か訃報のどちらかだと思ってしまいます。

それに加えて私は税務署時代、資産課税部門に所属しており、メインで扱っていたのが『相続税』です。

そのため今でも、相続=相続税をイメージしていしまうのはある種の職業病です。

さて相続税は富裕層の税金だと思われがちですが、2018年時点では亡くなった人の約9%くらいが相続税の対象となっています。

なのでサラリーマン家庭でも、相続税の対象になりますし、職員として相続税の相談対応で大変なことも多々ありました。

1:相続税の申告期限までの時間は短い

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内と、税務署の取り扱う税金の中ではもっとも申告期限に余裕があります。

ただ申告期限まで猶予が与えられているのは、それだけ相続税の申告書作成が大変な事を意味しており、

  • 相続財産の把握
  • 相続人間での遺産分割協議
  • 相続財産の手続き
  • 相続税の申告書作成
  • 申告書提出・納税

これらの作業を、10か月以内に完了させるのは大変です。

また相続手続きが大変になるのは、相続人の心情面が不安定になっている時期が重なる点もあります。

家族の死期をある程度悟れる場合には心構えもできますが、突然亡くなる場合には、誰だって動揺します。

また急に亡くなった場合には、財産所在や相続手続きも何をしたらいいかわかりません。

そのような心境を加味すると、10か月という期間は実は猶予がない時間なのかもしれません。

2:相続税の税務調査は申告してすぐには行わない

所得税の申告書を提出した場合には、数か月後に税務調査が行われることも珍しくありません。

しかし相続税の場合は、申告書を提出してから1年以上後に税務調査をすることもあります。

税務調査の連絡をすると、「今更どうして相続税の調査をするの!?」との意見も多く耳にしました。

相続税調査の時期が遅いのは、内部的な事情もあるのですが、相続人に配慮している側面もあります。

相続税の対象になる家庭には、長年連れ添ったパートナーが亡くなり、なんとから心身を保ちつつ、相続税の申告書を提出されるケースも少なくありません。

やっと相続手続きが完了したと思ったのも束の間、申告書を提出した直後に税務署から税務調査の連絡があったらどうでしょうか。

誰だって嫌ですよね。

それと同時に、

もう少し配慮してくれてもいいんじゃないの?

と税務署に訴えたくなる気持ちもあります。

そんな複合的な要素が絡み合って、相続税の税務調査は、他の税金よりもズレた時期に調査をしているのかもしません。

3:税務署職員は辛い心情を理解していないと思わられるのが辛い

税務署職員のイメージとしては、「冷徹」や「相手の感情を理解していない」とよく思われます。

実際、税務相談や確定申告相談で、色んな言葉を浴びてきました。

ただ税務署職員も本を正すと、一人の国民であり一般人です。

なのでみなさんと同じような心も持っていますし、税金を納める大変さも知っています。

また相続税であれば、相続の辛さはわかりますし、何より数多くの相続を見ています。

私は面接や電話相談を主に担当しておりましたので、毎日のように相続税の相談対応や相続税の申告書チェックをしていました。

相談時に家庭の事業を説明される人もいましたので、心苦しさを持っていたのは事実です。

ただそんな心境を理解されることはほとんどなく、逆に「税務署の人にはわからない」や「税金を取るだけで楽な仕事だね」と言われるのは辛かったです。

4:相手の心情に飲み込まれる人は税務署職員としてはやっていけない

はっきり申し上げると、税務署職員が行っている仕事は相手が嫌がることです。

なので税務署の仕事が直接的に喜ばれることはありませんし、喜ばれるような行為は、国税組織には喜ばれません。

なので税務署職員になるのであれば、如何に相手の気持ちを理解しつつ、同情しないかが、職員として上手く仕事をするかのポイントです。

また相手の気持ちを理解出来ないと、税務調査は上手くいきません。

なぜなら不正の手口を想像できないからです。

その気持ちのコントロールが下手な人は、私のように心を壊してしまう可能性があります。

悩んで路頭に迷う人
税務調査をする立場が嫌で心が壊れた職員【税務署職員歴史3】 前回までのあらすじ 超受け身体質でビビりな私は、職場に配属になっても自分から行動出来ずにオドオドしていた。 それに加えて新人...

5:税務署の立場上、相続税の調査では根掘り葉掘り聴き取りする

相続税の調査では、亡くなった人の生前中の行動や亡くなる直前の状態などを事細かく確認します。

それ自体は税務調査には必要ですし、キッチリ聴き取りをしないと税金の取り漏れが発生する恐れがあります。

一方相続人からすると、亡くなった人のことを話すために被相続人との思い出を思い返さなくてはいけません。

そのため聴き取りの最中に泣き出してしまう相続人や、取り乱してしまうケース少なくありませんでした。

なので相続人に感情移入する職員は、正直大変です。

なぜなら税務署に在籍する以上、何十、何百件とそれらの状況に立ち会うことになりますので。

なお最も気を付けなければいけないのは、そんな相続人の感情を脱税に利用する相続人。

世の中には、お金のために平気でウソや感情を利用する人がいますので。

 

ご参考になれば幸いです!