税務署は納税者に対して、『お尋ね』の文書が送付することがあります。
お尋ね文書は督促ではありません。
お尋ね文書は、あくまでも確認するためのお尋ねです。
- 不動産売却して申告が必要じゃないですか
- 財産をもらったと思いますが、贈与税の申告は大丈夫ですか
- 確定申告の内容で確認したいのですが
- 今年申告無いけど、どうしましたか
税務署のお尋ねに回答しなくても、特に罰則はありません。
しかし、本来申告すべき内容が漏れていた場合には、税務調査が行われる可能性が高いです。
元税務署職員として、正しいお尋ねの回答について、ご説明します。
1:税務署は申告漏れの人にお尋ね文書を送付しているわけではない
税務署は申告漏れの人に、お尋ね文書を送付しているわけではありません。
お尋ねする内容が正しければ申告が必要な場合に、お尋ね文書を送付します。
例えば、不動産を売却した場合は譲渡所得の対象です。
譲渡所得は譲渡益が発生していなければ申告不要です。
しかし、税務署は不動産の売却事実は把握しても、経費までは把握していません。
なので、譲渡益が発生する可能性がある人に、お尋ね文書を送付します。
2:お尋ね文書は税務調査ではないので加算税の税率が低い
お尋ね文書は、税務調査ではありません。
お尋ね文書を受けてから、確定申告をすると、自主申告扱いとなります。
期限後申告の場合、無申告加算税の対象です。
無申告加算税の税率は、納税額の15(20)%が賦課されます。
しかし、自主的に期限後申告をした場合、加算税は5%に。
つまり、税務調査が来る前よりも早く申告をした方が、最小限の罰金で済みます。
・無申告加算税
調査税率・・・15%
(納税額が50万円を超えた部分は20%)
自主期限後申告・・・5%
・過少申告加算税
調査税率・・・10%
(当初申告税額と50 万円とのいずれか多い額を超えた部分は15%)
自主修正申告・・・0%
3:税務署のお尋ね回答を無視した場合には税務調査に切り替わる
税務署のお尋ね回答を無視した場合、税務調査に切り替わります。
計算上、納税額が発生しない場合にはお尋ね文書に回答しなくても問題ありません。
しかし、お尋ねの回答が無いと税務署は、税務調査によって内容確認をする場合があります。
税務調査を受けて申告する場合には、自主申告扱いとなりませんので、通常の加算税率が適用されます。
4:税務署からのお尋ねを無視して大丈夫だった人は偶然か申告不要な人
税務署からのお尋ねを無視して大丈夫だった人は、偶然か税務署が申告不要と判断した人です。
偶然とは、税務署の調査の順番待ちか、税務署の手が回らない場合。
申告不要な場合とは、税務署が独自に調べた結果、申告不要と判断した場合です。
お尋ね文書の回答は義務ではありません。
しかし、税務署から見た場合、お尋ね回答をしない納税者の心証は悪いです。
回答は面倒ですが、正しく申告をしていれば、お尋ね回答をしてもマイナスにはなりません。
5:税務調査は最大7年まで遡って調査をする
税務調査は、最大7年まで遡って調査をします。
通常の調査対象の年数は5又は3年前まで遡ります。
(贈与税は6年)
しかし、重加算税の対象になるような、仮装・隠蔽をした人の場合には、税務署に7年前までの調査権限が与えられています。
国税通則法
(国税の更正、決定等の期間制限)
第七十条 次の各号に掲げる更正決定等は、当該各号に定める期限又は日から五年(第二号に規定する課税標準申告書の提出を要する国税で当該申告書の提出があつたものに係る賦課決定(納付すべき税額を減少させるものを除く。)については、三年)を経過した日以後においては、することができない。
一 更正又は決定 その更正又は決定に係る国税の法定申告期限(還付請求申告書に係る更正については当該申告書を提出した日とし、還付請求申告書の提出がない場合にする決定又はその決定後にする更正については政令で定める日とする。)
二 課税標準申告書の提出を要する国税に係る賦課決定 当該申告書の提出期限
三 課税標準申告書の提出を要しない賦課課税方式による国税に係る賦課決定 その納税義務の成立の日
2 法人税に係る純損失等の金額で当該課税期間において生じたものを増加させ、若しくは減少させる更正又は当該金額があるものとする更正は、前項の規定にかかわらず、同項第一号に定める期限から十年を経過する日まで、することができる。
3 前二項の規定により更正をすることができないこととなる日前六月以内にされた更正の請求に係る更正又は当該更正に伴つて行われることとなる加算税についてする賦課決定は、前二項の規定にかかわらず、当該更正の請求があつた日から六月を経過する日まで、することができる。
4 次の各号に掲げる更正決定等は、第一項又は前項の規定にかかわらず、第一項各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、同項各号に定める期限又は日から七年を経過する日まで、することができる。
一 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税(当該国税に係る加算税及び過怠税を含む。)についての更正決定等
二 偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額(当該金額に関し更正があつた場合には、当該更正後の金額)についての更正(前二項の規定の適用を受ける法人税に係る純損失等の金額に係るものを除く。)
三 所得税法第六十条の二第一項から第三項まで(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例)又は第六十条の三第一項から第三項まで(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例)の規定の適用がある場合(第百十七条第二項(納税管理人)の規定による納税管理人の届出及び税理士法(昭和二十六年法律第二百三十七号)第三十条(税務代理の権限の明示)(同法第四十八条の十六(税理士の権利及び義務等に関する規定の準用)において準用する場合を含む。)の規定による書面の提出がある場合その他の政令で定める場合を除く。)の所得税(当該所得税に係る加算税を含む。第七十三条第三項(時効の中断及び停止)において「国外転出等特例の適用がある場合の所得税」という。)についての更正決定等
確定申告期限から、数か月後にお尋ね文書が届くかもしれません。
お尋ね回答しなくても、すぐに音沙汰がないことはあります。
しかし、数年後に税務署は突然税務調査をするかもしれません。
少なくても、申告の必要性があったら申告しましょう。
税務署に見つかって逃れられるほど、甘くはありませんので。
ご参考になれば幸いです!