私は税務署職員として約12年間勤めましたが、税務大学校での1年間の研修生活は辛かったです。
税務職員採用とは、高卒や専門学校卒相当の人が採用される枠。
大卒相当の国税専門官とは異なり、採用当初に税務大学校で1年間の研修を受けることになります。
税務大学校は『学校』とついてますが、学校ではなく税務署職員の研修施設です。
私の個人的な体験談としては、正直二度と研修生活を送りたいとは思いません。
そんな税務大学校での研修生活と、私の実体験をご紹介します。
1:税務大学校とはは職員が研修をする施設
税務大学校は、職員が研修をする施設です。
税務大学校自体は、新人職員専用の研修施設ではなく、若手から幹部職員の研修を実施する際に使用させる施設だと思ってください。
※千葉県にある税務大学校東京研修所
⑴ 税務大学校での勉学は研修なので学歴として使えない
税務大学校での勉学は、税務署職員として働けるようにするために実施される研修です。
税務職員採用は税務大学校1年間で研修してる扱いなので、卒業しても学歴として利用することはできません。
私は税務大学校を卒業を税務署勤務を経て退職しましたが、最終学歴は高卒です。
そのため税務大学校の時代の研修を満了しても、対外的な価値はありません。
⑵ 防衛大学校は卒業すれば大卒扱いとなる
税務大学校とにた組織で、防衛大学校があります。
税務大学校を卒業しても学歴として認められませんが、防衛大学校は普通の4年制大学と同じです。
防衛大学校は4年生であり、非常に厳しい学生生活となりますが、卒業すれば大卒の学歴が貰えるのは大きな魅力です。
⑶ 税務大学校と防衛大学校の共通点は給料がもらえること
税務大学校と防衛大学校に共通するのは、勉強しながら給料がもらえることです。
学歴や研修期間はことなりますが、お金をもらって勉強できる環境は公務員ならではといえます。
- 両者ともに、給料がもらえる
- 税務大学校は、1年間の研修をしても学歴として認められないはなし
- 防衛大学校は4年制大学なので、卒業すれば大卒の学歴が手に入る
大学との違いは、身分が公務員であること。
勤務時間は、基本的には8時30分から17時までですので、その時間中は毎日勉強(研修)することになります。
2:税務大学校で1年間研修をするのは高卒の税務職員採用だけ
税務大学校で1年間研修をするのは、高卒・専卒の税務職員採用だけです。
税務署の採用されるケースは2種類あります。
- 税務職員採用(高卒)
- 国税専門官採用(大卒)
税務職員採用も国税専門官採用も、採用された時点で研修をします。
しかし国税専門官の研修期間は3か月なのに対し、税務職員採用は1年間と研修期間にも大きな違いがあります。
⑴ 税務職員採用者は研修所に集まって合同で研修を受講する
税務職員採用者は、研修所に集まって合同で研修を受講することになります。
職員の採用(配置)は各国税局となるのですが、全国の11の国税局と沖縄国税事務所は合同で研修を行います。
例えば東京国税局と沖縄国税事務所は千葉県にある東京研修所で研修を行いますが、それ以外の国税局は採用人数によって研修を行う場所が異なります。
私が税務署職員として採用された年は採用人数が少なかったため、札幌国税局・仙台国税局・東京国税局・沖縄国税局の採用職員が東京研修所に集まり、1年間全員寮生活で研修をしました。
寮生活は強制で、自転車で通える距離の人も例外なく寮生活です。
また、寮生活は二人一部屋で、畳6畳+学習机スペースが別途あるくらいの広さ。
一人のプライベート空間は確保できません。
⑵ 国税専門官採用は3ヶ月間の研修後に税務署に配属される
国税専門官採用は、3ヶ月間の研修を終えると、税務署に配属になります。
3ヶ月間は研修生活をすることになりますが、原則寮生活です。
国税専門官の研修場所は、税務大学校の本校である、和光校舎で行います。
和光校舎は、埼玉県和光市にあり、学寮棟も完備です。
バブル最盛期に建築されたので、東京研修所と比較にならないほど設備は整っています。
研修の最後1月は地方研修で行うのですが、和光校舎との(悪い意味の)ギャップが大きく、マンスリーアパートを借りる研修生もいました。
税務職員採用が、アパートを借りることは許されませんが、国税専門官は比較的ゆるい中で研修生活を送ります。
3:研修生活は完全入寮制でありプライベート空間は存在しない
研修生活は、完全入寮制です。
プライベートな空間は存在しません。
部屋にテレビもありませんし、トイレも共同。
相部屋の同期が辞めない限り、一人だけの空間を持つことはできません。
⑴ 研修所に入寮した最初の1か月間は外泊禁止
研修所に入寮した最初の1か月間は外泊禁止です。
(現在は規定が変更されている場合もあります。)
税務大学校と銘打ってますが、一応社会です。
それでも、最初の1か月は最低でも外泊は禁止です。
(前年の先輩職員の生活態度によって外泊禁止期間は長くなるケースも)
勤務時間以外は外出してもOKですが、門限を過ぎるとペナルティーが下されます。
私の時代の門限は、平日は20時、休日は22時でした。
⑵ 1日のスケジュールは指定されているので自由が少ない
1日の主家ジュールは指定されおり、自由時間は少ないです。
寮生活なので当たり前かもしれませんが、起床と就寝時間も指定されています。
起床・就寝スケジュール
- 6時30分起床
- 7時ラジオ体操(体育館)
- 22時30分点呼
- 23時就寝
寮に研修所は併設されているので通勤はありませんので、朝は相当ゆったりとしています。
でも、時間の使い道を制限されているのは精神的に合わないもの。
夜更かししても問題はありませんが、部屋の電気は消さなければいけないので何かすることはできません。
あと、寮にいる時は部屋の鍵を閉めてはいけません。
ですので、見回りに見つかれば即OUT。
私の班は入寮して早々に夜更かしバレて指導を受けてました(笑)
更に一般教養と基礎知識を身に付けるのは職務ですので、平日の夜2時間は自習時間が設けられています。
当然室内で勉強(又は課題)を行う必要があり、教育官(上司)が見回りに来ます。
特に最初の半年は見回りが厳しいですので、手抜きができませんでした。
⑶ 平日の3度の食事は研修所内の食堂で食べることになる
平日の3度の食事は研修所内の食堂で食べることになります。
税務大学校には食堂があるのですが、強制的に平日は全て食堂で食べることになります。
正直、美味しいかは微妙。
アレルギー体質の職員への配慮はありますが、研修生は食堂での食事をしなければいけません。
なお、食堂での食事は有料です。
朝食350円
昼食500円
夕食500円
※矢駒の研修時代当時の金額
毎月強制的に徴収されます。
休日は食堂も休業なので自由に食べられますが、問題は調理環境。
寮の1フロアに、コンロ2台と洗面台1か所しかありません。
それを数十人で利用するのは不可能なので結果的に外食などをすることになります。
4:税務大学校の研修では簿記・税法から憲法まで幅広く勉強する
税務大学校の研修では簿記、税法から憲法まで幅広く勉強します。
税務署のメインは税法です。
法人税や所得税も勉強しますが、一般的な法律・憲法についても那波部ことになります。
⑴ 税法以外にも法律科目は必須授業
税法以外にも法律科目は必須授業です。
1年間の研修では、税法科目だけではありません。
(詳細は国税庁HP 普通科研修を参照)
講義の内容は憲法や民法などの基礎法律から簿記、そして実務研修もあります。
(1コマは90分です)
法律系に関しては、テストがあるので赤点を取ることはできません。
(赤点ラインは60点)
また、研修時代に日商簿記2級合格を求められるので、試験に落ちたら再度試験を受けることになります。
実務研修は確定申告期間中の納税者対応です。
税務署が一番大変な時期は確定申告期間中ですので、研修生としてはその環境を知ることになります。
⑵ 成績の良し悪しが出世への分かれ道になることもある
成績の良し悪しが、出世への分かれ道になることもあります。
特に、成績上位者に関しては大規模署(各国税局の重要税務署)に行くケースが、ほとんどです。
また、事前に目を付けられる(評価されている)ので、税務職員(高卒)から税務署長などのポジションに上り詰める意思がある人は研修時代から頑張る必要があります。
ただ、いくら研修時代の成績が突出していても、職場の飲み会に参加しないと出世はできません。
税務署の出世は飲み会参加の有無で決まると言っても過言ではありません。
ちなみに、上位者以外に関してはあまり出世には影響はありません。
むしろ、成績が悪い人の方が出世しているケースがありますので。
5:税務大学校の研修生活で一番キツイのは見知らぬ人との共同生活
税務大学校の研修生活で一番キツイのは、見知らぬ人との共同生活です。
18年間実家で暮らしていた高校生が突然、相部屋で生活するのは大変です。
⑴ 公務員だからといって全員が真面目な人間ではない
公務員といって、全員が真面目な人間ではありません。
公務員になった直後は、所詮は高校卒業・専門学校を卒業したばかりの若者です。
特に、東京国税局採用は全国から希望して採用されるため、北は北海道、南は沖縄まで出身者はいました。
(東京国税局採用が一番採用倍率が低いのも、理由の一つですが)
職員にはチャラ男やオタクなども混在するため、班(15人編成)の空気があまりよろしくない場合もあります。
寮の部屋は2人1組です。1人のプライベート空間はありません。
また、数か月に1度、部屋がシャッフルされ、相部屋の同期も変わります。
当然誰になるかは運次第。
オタク系とヤンキー系が同部屋になることもあるので、結構波乱があったりしました。
因みに、東京研修所の壁は薄いです。
⑵ 研修生活は全て連帯責任で毎回全体で怒られる苦痛がある
研修生活では、全てが連帯責任で、毎回全体で怒られる苦痛があります。
税務大学校と聞くと学生っぽい雰囲気がありますが、あくまでも公務員の研修場所です。
先生役の教育官は上司であり、職場では統括官相当(民間の課長クラス)の職員が担当します。
特に、4月からの最初の3か月は研修生の身を引き締めるために、厳しく指導されます。
中盤以降はそこまで怒られませんが、とだらける職員がいれば連帯責任でまとめて怒られます。
いつも思ってましたが・・・
⑶ 男女のこじれは同班の雰囲気を破壊する
男女のこじれは、同班の雰囲気を破壊します。
1年間は寮で生活をするため同期同士で接触しかありません。
頻繁に帰省することもできないので、周囲とは遮断された環境下に置かれ生活をします。
その影響もあり、同期同士で付き合う職員は非常に多く、そのまま結婚する職員も少なくありません。
もちろん社会人ですので、付き合うこと自体には何も問題はありません。
(出会える場所もないですし)
しかし、研修時代に問題になるのが、1年間の研修期間中に別れたり再度付き合ったりする職員が多数いること。
班が別であれば接する機会はすくないのでいいのですが、同じ班で付き合って別れた場合の気まずさはとてもあります。
私はどんだけ嫌だったか(;^ω^)
寮生活ですが、男女で間仕切り区切られているので、寮内で会うことはできません。
むかしは敷居が無かったらしいのですが、とある出来事により間仕切りが設けられました。
6:税務大学校での1年間の研修で同期と過ごしたことは職場で役に立つ
税務大学校での1年間の研修で同期と過ごしたことは、職場で役に立ちます。
なんだかんだ言っても、税務署の職員として考えた場合、1年間の研修生活による同期との繋がりはとても大きいです。
配属される税務署は違っても、転勤が多い職場の都合どこかの税務署で一緒に働くこともあります。
事務レベルの話では、他の税務署に確認しなければいけない事項があれば同期に連絡すれば済むので、税務署に配置される時点から繋がりを持てるのは大事だったりします。
人間的な好みは、どうしても分かれます。
私も、合わない同期はいました。
理不尽はありましたが、9割の研修生は1年間の研修生活を修了し、税務署に配属されます。
(1割程度は途中退職をします)
職場に配属されたら、税務署で体験したキツイ相談が待ち受けています。
私の税務署職員時代の詳細については、税務署職員歴史の記事まとめ!【公務員を就職から退職までの記録】をご覧ください。
ご参考になれば幸いです!