誰でも1度は関係することになる『相続』。でも『相続税』は富裕層だけが支払う税金だと思っていませんか。
実は違います。
平成27年以降に亡くなった人に対する相続税の基礎控除額が引き下がり、相続税の対象者が2倍以上になった地域もあるんです!
私の父は年金暮らしだったし大丈夫。
私の夫はサラリーマンだったし、今そんなに貯金も無いから関係ないよね。
そんなことを考えていると、相続から数年後に突然税務署から連絡がある!かもしれません。
私は税務署で相続税担当をしていましたので、
- 相続税があるとは知りませんでした
- 相続税が発生するとは思っていませんでした
という相続人の方を、何人も見てきました。
相続税の申告期限は相続開始日(亡くなった日)の翌日から10か月以内です。
長いか短いかを感じるのは各々ですが、申告期限を過ぎてしまうと適用できない優遇制度やペナルティーの税金が発生しますので期限は守りたいところ。
そこで、今回は『相続』や『相続税』の言葉しか知らない人もわかるように解説しますので、是非ご一読ください!
※ この記事では亡くなった人を被相続人と表記いたします。
1:相続税は誰が相続人になるかを把握するところから始まる
⑴ 配偶者(妻、夫)は必ず相続人となる
人が亡くなった場合には『相続』が発生します。
配偶者は法律上(民法)特別な位置にあり、他の相続人の人数に関係なく法定相続分は決まっています。
・ 法定相続分
民法上で定められている相続する権利の割合
ただし、配偶者とそれ以外の相続人の続柄で法定相続分の割合は変化します。
・ 相続人が配偶者と子の場合の相続権の割合
配偶者 1/2
子 1/2
・ 相続人が配偶者と被相続人の親の場合
配偶者 2/3
親 1/3
・ 相続人が配偶者と被相続人の兄弟の場合
配偶者 3/4
兄弟 1/4
民法(法定相続分)第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
配偶者は、最低でも相続財産の半分は相続できる権利が存在しますが、子や兄弟が相続人の場合は同じ立場の人の人数(子なら子の人数)によって自分の相続できる権利が少なくなります。
※ 日本の法律上、戸籍上の配偶者のみしか配偶者として認められていませんので、所謂『事実婚』は原則相続権がありません。
⑵ 相続人の第一順位は子
配偶者は特別な存在ですが、相続人の承継順位の第1位は子になります。
子には養子も含まれるため、被相続人の娘と娘婿(養子縁組)していた場合には相続人は2人です。
また、民法上は子の生まれた順番での相続権の差はなく、3人兄弟であれば3人平等に権利は存在します。
・ 相続人が配偶者と子3人(A、B、C)の場合
配偶者 1/2
子A 1/2×1/3(子3人)=1/6
子B 1/2×1/3=1/6
子C 1/2×1/3=1/6
※ 以前は子によっても相続割合が違っていましたが、平成25年9月4日の最高裁で子の相続権は一律平等との判決が下されました。
⑶ 子がいない人は両親が相続人に
被相続人に子がいない場合には、被相続人の両親が相続人となります。
法律上は直系尊属と言い方をします。
・ 直系尊属
自分の直通する血族
自分の両親、祖父母、曾祖父母が該当する。
なお、配偶者の両親は直系尊属ではないが、養子縁組をした養父母は直系尊属に該当する。
あまり例はありませんが、被相続人の両親が亡くなっていて祖父母が健在の場合には祖父母が相続人となります。
・ 相続人が配偶者と被相続人の父Dと母Eの場合
配偶者 2/3
父D 1/3×1/2(DとE)=1/6
母E 1/3×1/2=1/6
⑷ 両親がいない場合には兄弟が相続人に
被相続人に子も両親(祖父母)もいない場合には被相続人の兄弟が相続人となります。
兄弟の場合は被相続人の子の場合と異なり、被相続人と両親が同じかどうかで相続権の割合が変わります。
・ 全血兄弟
被相続人と同じ両親の子である兄弟
・ 半血兄弟
被相続人と両親が片方のみ同じである兄弟
相続人に全血兄弟と半血兄弟がいる場合法定相続分の割合は2:1となります。
・ 相続人が配偶者と全血兄Fと半血弟Gの場合
配偶者 3/4
兄F 1/4×1/3×2(2:1の2)=1/6
弟G 1/4×1/3×1(2:1の1)=1/12
⑸ 相続権利を承継する代襲相続について
被相続人よりも先に子が亡くなった場合には親が第2相続順位になりますが、例外があります。
それは先に亡くなった被相続人の子に子(被相続人の孫)がいる場合です。
法律上では代襲相続(だいしゅうそうぞく)というのですが、被相続人よりも先に亡くなった相続人の子に相続権を引き継がせることです。
子の子が複数いる場合には本来の子の権利を分けることになるので、代襲相続人以外の相続人の法定相続分がが減少することはありません。
・ 相続人が配偶者と子Hと子Rの子J、Kの場合
(子Rは被相続人より先に死亡)
配偶者 1/2
子H 1/2×1/2(子H、Rの人数)=1/4
Rの子J 1/2×1/2×1/2(子の子J、Rの人数)=1/8
Rの子K 1/2×1/2×1/2=1/8
被相続人の兄弟が先に亡くなっている場合も代襲相続の対象となりますが、子の場合との相違点は代襲の回数です。
被相続人の子の場合には代襲相続を2回できます。(再代襲)
被相続人から見ると、子と孫が先に亡くなっても曾孫がいれば曾孫が相続人になります。
被相続人の兄弟の場合には代襲相続は1回だけです。
被相続人よりも先に兄弟が亡くなっている場合には兄弟の子は代襲相続人になれますが、兄弟の子も亡くなっている場合には兄弟の子の子(孫)は相続人にはなれません。
2:相続税は相続人全員が申告納税する必要はない
⑴ 相続税は基礎控除以内の財産なら申告不要
相続税は相続人全員が判断する必要はあります。
ただし、全ての人が必ず申告する必要はありません。
相続税には基礎控除額があります。
相続税基礎控除額の計算式
3000万円+600万円×法定相続人の人数=相続税基礎控除額
被相続人が基礎控除額以内の財産であったならば、税務署に相続税の申告は不要となります。
・ 相続人が配偶者と子2人の場合
3000万円+600万円×3人(配偶者と子2人)= 4800万円
法定相続人に養子がいる場合には計算は異なる可能性はありますが、基本的にはこの計算式になります。
⑵ 相続税の申告書提出先は亡くなった人の所轄税務署
相続税の基礎控除額を超える相続財産がある場合には相続税の申告が必要となります。
申告期限は相続開始日(亡くなった日)の翌日から10か月以内に申告と納付が必要になります。
また、相続税の申告書を提出する場所ですが、被相続人の住んでいた場所を管轄する税務署に提出することになります。
なので、相続人は全員千葉県柏市(柏税務署管轄)に住んでいたとしても、被相続人が北海道函館市に住んでいた場合には函館税務署に申告書を提出することになりますのでご注意ください。
※ 被相続人が海外で亡くなった場合にはケースが変わる可能性がありますので、最寄りの税務署に確認してください。
⑶ 9割の人は税務署に手続きは不要
少し脅かした部分もありますが、実際に相続税の申告が必要な方は全体の1割にも満たないです。
地域によって申告の割合は変わりますが、亡くなった人のおおよそ6~8%が相続税の対象となります。
もちろん都心の一等地に住んでいた人の相続税申告割合は別次元ですが(笑)
3:相続財産は全て相続税の対象になると考えること
⑴ 原則、所有していた全部の財産が相続税の対象
細かい部分はありますが、基本的に被相続人が所有していた財産は全部相続税の対象となる財産と考えてください。(例外はお墓など)
なので、現金、預貯金、土地、建物、株式、車、貴金属、貸したお金(債権)など全て相続税の計算の対象です。
⑵ 借金などの負の財産は減額要素
借金やお葬式の費用は相続税の扱い上、債務(減額対象)となります。
相続税の計算ではプラスの財産からマイナスの財産の残りが基礎控除額を超えるかで判断しますので、1億円分の土地を所持してても、2億円借金があれば相続税は発生しません。
1億円ー2億円=0円(マイナスは0円扱い)
ただし、1億円の土地は相続人Aさんが相続し、借金2億円は相続人Bさんが相続した場合にはAさんに相続税が発生する可能性があるので注意が必要です。
⑶ 相続財産ではなくても相続税の対象となる財産もある
相続税は亡くなった時点の被相続人の所有していた財産が対象となりますが、例外があります。
それが、死亡生命保険金と死亡退職金です。
ざっくりとした考えでは、保険金や退職金を受け取る原因が被相続人の死亡の場合には相続財産と合算して相続税の計算をします。
なので、相続財産が預貯金1000万円のみであったとしても、死亡生命保険金が1億円ある場合には相続税の対象金額は1億1000万円となり、相続税が発生します。
ですが、死亡生命保険金と死亡退職金には別途控除額があり、それ以内の金額であれば計算上0円となります。
(控除額を超える場合には超えた部分が相続税の対象)
・ 生命保険金控除・退職金控除の計算式
500万円×法定相続人の人数=それぞれの控除額
※ この控除が適用できるのは法定相続人のみです。
4:相続が発生したら全体の財産を把握するのが先決
色々お話しましが、前提となるのはやはり亡くなった人がどれくらい財産があったのかで相続税が発生するか否かは分かれます。
相続税の基礎控除額は最低3000万円ありますので、相続財産が3000万円以内であれば税務署に相続税の手続きをする必要はありません。
(市役所や銀行などの手続きは必要になりますが)
それを判断するには、いかに早く相続財産の全体を把握するのかが大事です。
大袈裟かもしれませんが、意外と財産の把握漏れは存在します。
財産の全体を把握して、相続税が発生しない金額(基礎控除以内)であれば大丈夫です。
しかし、相続税が発生しそうな場合には税理士に依頼する必要もでてきます。
相続税の申告は税理士がいないと作成できないことはありません。
ですが、財産の種類が多ければ計算も複雑になります。
計算誤りがあれば当然税務署も指摘をし、修正申告及び追加で税金を納めてもらうことになります。
ですので、税理士に依頼して相続税の申告をするのば無難です。
(税理士報酬の費用は発生してしまいますが)
でも、税理士に依頼としても、知り合いの税理士っていませんよね。
家の近くにある看板で税理士を見つけるのもいいかもしれませんが、現在はネットから税理士を検索することができます。
例えばこんなサイト⇓
『税理士』と一括りにしても専門分野は分かれています。
プロ野球には投手コーチや外野コーチが存在しますが、ピッチャーが外野コーチにピッチングを教えてを仰ぐことはありませんよね。
もちろん指導できなくはないですが、折角指導してもらうなら投手コーチがいいです。
税理士も同様です。
長年相続税を担当してきた税理士の方が安心しますし、逆に若手の税理士の方が最新の法律に詳しかったりします。
もし相続が発生し、相続税を支払いそうになりましたら一度ご相談してみてはいかがでしょうか。
最後に、今回説明したのは一般的な部分であり、例外的なケースもあります。
なので、個別的な内容については税務署又は税理士に相談してみてください。
(私は税理士資格が無いので個別相談は受けられませんので(´ω`))
ご参考になれば幸いです!