「税金の無駄遣い~( ˘•ω•˘ )」
この言葉自体は好きではないのですが、公務員時代それを痛感することはいくつもありました。
何でもかんでも「無駄遣い」と揶揄してはいけませんが、やはり言われるくらいの無駄は公務員には存在しています。
問題なのは本当に無駄な事はソッポを向き、注目される部分のみを削減することです。
削減対象の中には、本来あまり削減してほしくない部分もあったりと国税庁や国税局の方針には疑問を持っていました。
(経営的な視点と現場の視点が相違することは多々あるのでしょうがないのですが)
この記事では、あまり焦点が当たらない無駄な事務(パンフレットや用紙類)にスポットを当ててみましたので続きをご覧ください!
1 各署に配置される部数は国税局の独断で決まる
⑴ 税制改正のパンフレットは確実に余る
税務署には大量のパンフレットが設置されています。
部署で一番規模の小さい資産課税部門(相続税・贈与税担当)でも、毎年10種類以上のパンフレットが用意されています。
当たり前ですが、パンフレット作製費も税金です。
基本的に見栄えを良くしようとカラー印刷なのでパンフレット自体にもそれなりのコストが発生します。
通常の会社であればどのくらいの量が必要かを現場にヒアリングするかもしれません。
でも、税務署は国税局や国税庁が作成したものをそのまま設置するだけなので、どのくらい必要かを伝えることはできません。
税務署は全国で524署あり、規模もバラバラですので配布される部数も各税務署によってことなります。
流石に全税務署同じ部数ではありませんが、基本的には国税局が勝手に設定した部数なので常に余りがでます。
毎年の税制改正を知らせるパンフレットは、各税目ごとに単位は500や1000部単位で印刷され税務署に配られます。
対象者が多いものであればいいのですが、中には年間で10件程度しか適用見込みがない特例についても1000部単位で税務署に配られるので無駄でしょうがありません。
当然ロビーに設置しても興味がないパンフレットは埃をかぶり、そのまま役目を終えていくのです。
⑵ 目玉政策のパンフレットは大量に配置される
税務署に勤務していると明らかに力を注いでいる法律が感覚でわかります。
私は相続税・贈与税担当でしたが、相続税の特例創設についての力の入れようは凄かったです。
相続税には条件を満たすと相続税の納付を延納する措置があります。
(条件を満たし続ければ相続税は免除)
その一つに医療法人の株式に対する相続税を猶予する特例(医療法人を承継する人は優遇する措置)があるのですが、そんなの99.99%の人が関係のない法律です。
正直全国で100件も適用がないくらいのレアな特例。
私も現場で見たことは1度もありませんでした。
しかし、その医療法人の株式に関する特例が法案成立すると、各税務署にそれについてのパンフレットが2000、3000部と強制的に各署に配られるのです!
絶対に不要です
(スペースの邪魔でもあったので私はパンフレットが届いてすぐに半分は廃棄していました(笑))
特殊な特例に関しては適用対象者が少ないです。加えて特殊性からも対象者本人で特例適用の可否判定をするのは困難なので100%税理士に依頼します。
本人自ら税務署に手続きをすることはありません。情報も依頼している税理士に直接聞いた方が分かり易いのでパンフレットの価値は0%です。
そんな状況下のパンフレットこそ無駄の塊です!
⑶ 唯一削減は確定申告書の用紙
冒頭に書きましたが、削減対処となるのは注目が集まる事務だけです。
税務署が最も注目されるのは確定申告時期ですよね。
国税庁や国税局は指示はしますが、直接確定申告の現場に立つことは無いので、机上のイメージで判断をします。
達成目標値があるのであれば、実際の状況は関係なく用紙類を削減します。
e-Taxを推進しているので、紙の申告書の用紙及びそれに関する説明書は確実に削減されています。
(公表しているe-Taxの利用件数も半分ウソなのですが)
e-Taxを推進するのは理解できますが、現実として税務署に来書して紙の申告書を持って帰って申告書を作成する人は大勢います。
その人々からすると、紙で申告したいのに設置していなのは納得がいかず、毎年苦情の原因にもなります。
最も国税庁や国税局は削減数の結果だけわかればいいので、苦情が来ても一切関係がないので今後紙の申告書の用紙の設置が増えることはありません。
まぁ、e-Taxが利用しやすければ勝手に利用者が増えるんですけどね(苦笑)
2 億単位の税金がドブに捨てられている現実
⑴ 各税務署でパンフレットが1000部余ったら・・・
カラー印刷1枚の原価が10円だった場合、1000部余ったら1つの税務署で1万円無駄が発生します。
それが524署だと約500万円です。
1年間で100種類のパンフレットや用紙無駄になっているので、年間で5億円は無駄になっています。
紙の原価だけでも5億円なので、実際のコストで換算すると数倍又は数十倍の無駄が発生している計算になってもおかしくはありません。
ご存知かもしれませんが、公務員は予算を使い切る文化です。
予算オーバーは怒られますが、予算以内であれば全てが合格となります。
仮に10億円無駄があっても、予算以内であれば適正な範囲内です。
残念ながら・・・
⑵ 最短で1月で配布不可になるパンフレットが存在する
法律は唐突に変化します。
それこそ国会の方針一つで激変することも珍しくありません。
(消費税の軽減税率ねぇ…)
退職する前に経験したものだと、消費税増税の延長がありました。
消費税は現状2019年10月から増税となっていますが、これは1度延期になっています。
元々は2017年4月に増税予定だったので、税務署は延長の為の準備はしておりました。
当然パンフレットなども大量に印刷されていました。
『2017年4月に消費税が10%になります!』と。
しかし、実際には増税は延期となり、増税日は2019年10月1日に延期が発表されたため、『2017年4月に増税!』と表示されたパンフレットの全ては設置することはなくゴミ屑と化しました。
署によっては消費税関係のパンフレットが1万部無駄になった税務署もあるでしょう。
それが全国524の税務署で発生しました。
どのくらいの無駄なコストを算出したのでしょうか。
それについて指摘する人は誰もいません。
⑶ 報告不要な用紙類は削減対象にならない
確定申告に関しては国税庁・国税局も力を入れているので、税務署は細かい在庫管理の報告を国税局に行います。
(国税局は集計して国税庁へ)
ですが、逆をいうと確定申告に関するもの以外の在庫報告はほぼ存在しません。
税務署側とすれば「こんなパンフレット1部も不要だからいらない!」と言いたい用紙もあるのですが、国税局へ発言する機会がないので永遠と無駄を排出し続けます。
※ 因みに国税局が求めていない部分での意見は何一つ通りません。
どっかで印刷しなければいけない理由でもあるのかもしれませんが・・
3 人件費の視点から見た無駄
⑴ 準備する時間と労力も人件費
国税局からパンフレットが来たら荷物運びをしてロビーに設置をして、時期が過ぎたら廃棄をします。
当たり前ですが、配置から廃棄まで税務署の職員が全て行います。
はっきり言って面倒な作業でした。
パンフレットの配置する業務は本来の業務と別扱いなのでですが、国税局から用紙類が届いたら本来の作業を中断し、設置に取り掛からなければいけません。
パンフレット等の準備は各税目の担当ごとで整理しますので、年間で換算すると職員1名は1年間ずっとパンフレットや用紙の整理に時間を費やしています。
年収500万円だと仮定して、それが全国524署でそれが行われています。
人件費もどれだけ無駄になっているかご理解できるかと思います。
⑵ 大量に余った用紙類を捨てる作業が最もむなしい作業
税務署で嫌いな作業の一つに、書類を廃棄する作業がありました。
理由はそこから何も生まないからです。
私の立場からすれば時間が消費されます。
作業も無駄です。
捨てるゴミも元々不必要な量のパンフレット類です。
本来削減可能なパンフレットや用紙類なのに、一向に改善しない(興味が無い)ため、無駄な作業は波及してきます。
現場の意見を出したいけれども意見を言えない。
無理やり意見を言っても通ることは無い。
(できない理由をつけるのは驚異的に上手いです)
そんな作業には虚しさしか残りませんでした。
4 知られてない無駄は削減されない
内部の人間がどんなに不満を持っていても改善要望があっても、上層部が変えようとしないかぎりは何も変わりません。
今回挙げた内容も、何もデメリットも無く時間も労力もコストも削減できるものです。
しかし、興味のない(注目されない)事務については改善しようとしない悲しい現実があります。
些細な事と思われる方もいるかもしれません。
ですが、職員と立場として、コスト削減のために「給料を削減しろ!」と言われる前に実行できる簡単なコスト削減があることは十分に認識しています。
今回はそのことを少しでも知っていただければ嬉しいです。
ご参考になれば幸いです!