「うわっ私の還付金少なすぎ⁉」
ネットや新聞などで「税金が還付になる!」と謳っているので、意気揚々と確定申告の手続きに税務署に行ったら還付金額が1000円だった…
そんな経験をされた方もいるかもしれません。
拡散される情報は「税金が戻ってくる!」とのタイトルで『生命保険控除』や『医療費控除』についてよく取り上げられていますが、正直『生命保険控除』や『医療費控除』そんなに費用対効果が大きい控除ではありません。
基本的に『生命保険控除』や『医療費控除』は税金を多く納めた人ほどメリットが大きい制度となっており、逆に税金を納めた金額が少ない人ほど恩恵が少ないです。
なぜそのような制度設計になっているのか、仕組みも含めご説明します!
1 所得税の控除には『所得控除』と『税額控除』がある
給与や年金などの収入金額によって納める税額が決まる所得税には2種類の控除があります。
『所得控除』 と 『税額控除』
先に所得税の計算の流れを説明しますと、
所得税の計算
収入(給料など)ー経費(給与控除など)=所得金額
所得金額ー所得控除(医療費控除など)=課税対象金額
課税対象額×税率=所得税
所得税ー税額控除=納付税額
※ 所得税の金額の2.1%分を復興特別所得税として別途発生します。
所得控除
所得金額から差し引く金額です。
主な所得税控除は、
配偶者控除、扶養控除、寄付金控除(ふるさと納税)、医療費控除です。
所得控除額は税率を算出する前の控除であるため、控除額=差引税額ではありませんので注意が必要です。
税額控除
算出された税額から直接控除する金額です。
ローン控除や定率減税(現在廃止)はこちらに該当します。
税額控除は税率を算出した後の控除であるため、控除額=差引税額となります。
2 所得控除は所得が少ないほど損をする
所得税は収入金額が多いほど税率が上がる累進課税方式を採用しているため、所得税の対象となる金額が大きい人ほど税率が高くなります。
収入が多い人ほど税金を多く支払うことになるのですが、所得控除の金額に関しては収入が多い人ほど税額が控除されます。
所得控除100万円があり、所得控除額を差し引いた後の税率が10%と33%の場合
(収入が多い人ほど税率は高い)
・税率10%の人
100万円×10%=税額10万円相当の控除
・税率33%の人
100万円×33%=税額33万円相当の控除
所得控除額が同じ100万円であっても、収入金額によって税金控除となる金額が変化するので注意が必要です。
ネットやテレビであるふるさと納税したら○○円税金が戻ってくるなどは大体最高税率で計算しているのでそんなに税金が還付されることはありません。
3 税額控除も満額差し引かれない場合もある
税額控除は算出された税率から直接控除されますが、こちらにも注意点があります。
税額控除の差し引かれる上限は算出された税率が上限です。
ローン控除額が40万円あっても、算出された納める税額が30万円であれば、控除できる金額は30万円が限度額となります。
※ 差引き残ったローン控除額は地方税から差し引かれます
所得税が還付になる場合は、事前に納めた所得税(源泉徴収金額)が限度です。
ケース1(復興税は省略しています)
算出税額 50万円
ローン控除額 40万円
源泉徴収金額 30万円
50万円-40万円=10万円
10万円-30万円=△20万円
還付金額20万円
ケース2(復興税は省略しています)
算出税額 30万円
ローン控除額 40万円
源泉徴収金額 30万円
30万円-40万円=0円(マイナスにはならない)
0円-30万円=△30万円
還付金額30万円
ケース1、2ともにローン控除額は同じ40万円でしたが、算出税額の金額によって還付になる税額が変わりますので注意してください。
4 医療費控除が一番費用対効果が見込めない控除
医療費控除が一番絶税効果の薄い控除です。
医療費控除の計算式
医療費ー補填金額(※1)=対象の医療費
対象の医療費ー差引金額(※2)=医療費控除の金額
※1 補填金額は病気により民間の保険金の支払金額など
※2 差引金額
10万円or所得金額×5%のいずれか少ない金額
前提として大部分の人が年間で10万円以上医療費の支出がないと医療費控除の金額が発生しない。
10万円以上医療費があっても医療費控除は所得控除なので所得税の税率が5%だと医療費控除の金額の5%としか税額に影響しない。
100万円などの高額医療費や収入が数千万円の人は税額に大きく影響しますが、一般的な人は医療費の金額に対しての税額控除は僅かになります。
おわりに
確定申告期や直前になるとさまざまな媒体で還付特集がされます。
所得控除にしても税額控除にしても税額が増えることはありません。
しかし、控除によっては税額に及ぼす影響が少額であったり、逆に控除適用するための申告手続きの費用の方が高くなる場合があります。
(税金1000円のために交通費2000円を使って税務署に申告するなど)
税金の還付だけに目を向けず、手続きが面倒であれば申告しないのも選択肢です。
全体を踏まえて最も恩恵のある方法を検討し、還付金が多く受け取れる場合には申告をしてください!
ご参考になれば幸いです!