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ふるさと納税の返礼品3割制限で得をするのは国税庁

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「高額返礼品は寄付金控除の対象としません」

野田聖子総務相がふるさと納税の抜本的な見直しをすると会見しました。

ふるさと納税見直しへ 高額返礼は優遇除外

 

問題点と内容としては以下の事項になります。

 

  •  ふるさと納税に対する返礼品ありきの制度になっている
  •  返礼品が高額化している
  •  自治体の特産物以外を返礼品として使用するので地域活性に繋がらない
  •  高額返礼品を止めろと言っても無視する自治体が数多く存在する

 

現状のふるさと納税は、返礼品ありきの制度です。

本来の理念である『生まれ育った地域への寄付』による地域活性化の趣旨から逸れているので方向修正をしたい気持ちは理解できます。

平成30年9月時点の情報では、ふるさと納税の金額の3割を超える返礼品を送った場合、ふるさと納税をした人がふるさと納税した金額を寄付金控除から除外するというものです。

(自治体ではなく、寄付した人が一番損をする・・・)

ふるさと納税をしているほぼ全員が返礼品と返礼品の価値に伴う実質的な節税対策として行っているので、総務省が言っていることもごもっとも。

 

私も元税務署職員なので、ふるさと納税には対象なりとも関わってきました。

そこで、私なりの現在の問題点と今後の改正に伴う問題点について説明します。

 

※平成31年3月27日にふるさと納税の返礼品3割制限の法案が可決されました。また、同年6月までに、ふるさと納税対象となる市区町村を設定することとなりました。

 

1:ふるさと納税と返礼品は意味がまったく違う

 

ふるさと納税=返礼品のイメージが完全に定着しています。

しかし、返礼品は自治体が勝手にやっていることであり、ふるさと納税とは別扱いです。

本来、寄付は対価が無い行為です。

(寄付する人がタダで行う)

返礼品をもらえる前提があるなら、本当は、寄付ではなく、単なる取引です。

例えば、NPO法人が「100万円くれたら100万円相当の牛肉をプレゼント!」と周知し、実際に行われたら、寄付ではなく収入になります。

 

ですが、不思議とふるさと納税に関しては返礼品の関係性は無いとされているので、返礼品(対価性)があってもふるさと納税は寄付金控除の対象となっています。

(個人的にはに近いグレー

 

2:高額返礼品の過熱したのはふるさと納税は地方にとって恵みの雨だから

発端は、ふるさと納税をした人に対し返礼品を出した自治体がふるさと納税先として脚光を浴び予想以上のふるさと納税(寄付)を受けたことです。

特産物を活かした返礼品であれば地域活性化にもつながるので、過剰にならなければ本来の趣旨に沿った役割でむしろ予想以上の役割を果たしていたかもしれません。

しかし、ふるさと納税の寄付金額が地方にとっては無視できない金額となりました。

その結果、返礼品を提示しなければ税収が減ることにつながるので、全国的にふるさと納税の返礼品合戦が始まりました。

そうなると、寄付する側にとって、寄付する基準は当然返礼品の内容になります。

その結果、返礼品の価値が高い市区町村にふるさと納税が集中するようになりました。

過熱ぶり返礼品の高額化は、国にとっても無視できなくなり、平成29年4月1日に総務省が地方団体に過度な返礼品についてのふるさと納税に係る返礼品の送付等についてを通知しました。

しかし、地方団体への通知は、法的な拘束力がありません。

なので、無視したもの勝ちとなったのが平成30年までのふるさと納税です。

市区町村にとっては、法律違反でなければ税収が潤うので、とことんやった意図は理解できます。

しかし、2019年(平成31年)6月1日からは返礼品の3割制限と、ふるさと納税対象の市区町村が指定されます。

もしかすると、通知を無視した市区町村がふるさと納税対象外となる可能性もあるのが、現状です。

 

3:ふるさと納税の返礼品3割制限の意図はグレーゾーンの容認

 

今回のふるさと納税の見直しの根本は、現在のままだと本来の趣旨から大きく逸れたままになることです。

ふるさと納税で潤う地方自治体もありますが、それにより税収が大幅に減っている自治体もあります。

国としては、どうしても特産物や名産品がある自治体に偏ってしまうため、当初の「生まれ育った町への寄付」から「欲しい返礼品があれば受けたい」との軌道を修正したいです。

 

それとは別に、個人的に問題だと思っているのが、ふるさと納税が『寄付行為』に該当しないのではないかという点です。

寄付は対価がない行為です。ですが、現状のふるさと納税には明らかに対価が存在ます。

表向きはふるさと納税と返礼品の関係性はないとしていますが、誰がみても関係性がないとの解釈は苦しいです。

(税務調査でそれを言われたら国税庁がどうするのかも気になります)

 

過熱ぶりも問題ではあります。

ですが、仮に過剰な返礼品により税収が大きく落ち込んだ自治体が、高額の返礼品については対価性があり寄付行為ではないと裁判を起こしたらどうでしょうか。

もしかしたら、裁判所は高額返礼品を受け取った寄付行為に関しては寄付金控除を認めない可能性もあります。

(あくまでも私見ですが)

 

万が一そうなると国、地方、寄付者を巻き込んだ泥沼化が避けられない状況になりので、国としては今の時点で防ぎたい。

国税庁としても返礼品は一時所得の対象としていますので、国が返礼品3割までと上限を設定する基準を設けることで、対価性についてのグレーゾーンを事実上容認し、穏便に済ませたいところです。

 

4:税制改正の真の目的は返礼品の所得課税の可視化

※ふるさと納税の改正案が平成31年3月27日に可決されました。

こちらの部分に関しては、平成30年9月に作成した記事となります。

 

予定では平成31年(2019年)度の税制改正で法案を提出するみたいです。

私の勝手な想像ですがこのような点が盛り込まれる可能性があるかと思っています。

ふるさと納税制度の改正事項(案)

  1.  地方自治体のふるさと納税証明書の発行を義務化する
  2.  ふるさと納税証明書に返礼品の金額を記載する
  3.  寄付金控除を適用する人はふるさと納税証明書を必ず添付して申告をしなければならない

 

国側のメリット

  1.  過剰なお礼品合戦の抑止
  2.  ふるさと納税の地域の平準化
  3.  グレーゾーンの容認
  4.  返礼品額の把握

この4点です。

実は国としては4番目の『返礼品額の把握』が改正の本丸ではないかと。

 

一般的な家庭であれば、節税のためのふるさと納税の額は数万円程度です。

では、所得が数億円ある人はどうでしょうか。

所得税の寄付金控除の限度額は所得金額の40%です。

仮に所得が10億ある人は4億までの寄付は寄付金控除の対象です。

地方税(住民税)との兼ね合いもありますが、4億円寄付した内2億円分返礼品があったらどうでしょう。

国税庁としては返礼品2億円分を一時所得として漏れなく課税したいはずです。

 

現状どのように国税庁が返礼品の金額を把握しているかはわかりませんが、来年度の税制改正により確実に把握できる仕組みを構築する可能性は考えられます。

 

5:返礼品の金額をどう算出するかも今後の問題点

報道による税制改正案として、返礼品の金額がふるさと納税額の3割を超えた場合はふるさと納税は寄付金控除の対象外としています。

問題は返礼品の金額をどう算出するかです。

 

税務署は基本的に時価評価で判断しますので、現状はふるさと納税をした時点の時価額をもって返礼品の額とするしかありません。

※ 国税庁は明確な基準を出してません

「ふるさと寄附金」を支出した者が地方公共団体から謝礼を受けた場合の課税関係

 

3割基準を設けるのであれば、返礼品を出す自治体はそれを証明しなければいけません。

しかし、ふるさと納税を大きな収入源としている自治体が簡単に引き下がるでしょうか。

100万円のふるさと納税を受けてた地方自治体が、返礼品30万円相当としての牛肉送ったとします。

その場合、本当にその牛肉が30万円なのかは不明です。

 

同じ牛肉の場合

  •  お歳暮用の牛肉
  •  焼き肉屋で使用する牛肉

どちらが値段が高く売れるでしょうか。

(当然お歳暮用の方が高く売れます)

 

PCの場合

  •  新型PCの発売前のPC
  •  新型PCの発売後のPC

どちらが高いでしょうか。

 

地方自治体が日常販売しているわけでもないのできちんと時価を算出できるかわかりません。

 

返礼品額の3割ラインを攻める地方自治体であれば、

100万円で販売できる牛肉

流通不可能な部位を集めたアウトレットな最高級牛肉30万円分

として返礼品を送るかもしれません。

 

いずれにしても、返礼品額3割制限で一番迷惑するのはふるさと納税をした人です。

所得税の調査で、返礼品がふるさと納税額の3割以上とされた場合ペナルティーはふるさと納税をした人だけが受けます。

 

そこだけは避けていただきたい。

 

対策としては、大半の返礼品は自治体で作成(収穫)している物ではなく、自治体の住民が作成・栽培などをしているものを自治体が返礼品として送っています。

当然自治体には仕入値がありますので仕入値=返礼品の金額とするのが一番合理性があるかもしれません。

 

6:ふるさと納税は行政全体で考えれば損しかない

ふるさと納税により寄付を受けた市区町村は税収がプラスになりますが、その分税収がマイナスとなった市区町村も存在します。

それだけなら±ゼロなのでいいのですが、ふるさと納税サイトに手数料を支払ったり、Amazonギフトを返礼品にしている分だけマイナスになります。

ふるさと納税サイトは民間企業です。なので、そこからふるさと納税をしたら、市区町村は手数料を支払うことになります。

手数料を得た民間企業が東京にあれば、東京都に税金を支払うので、結局はお金は地方に回りません。

また、AmazonギフトはAmazonが儲かりますが、Amazonは殆ど日本に税金を支払っていません。

(日本には配達倉庫のみが存在し、拠点は無い扱いです)

つまり、本来日本の税収となる税金が海外に渡っているのがふるさと納税の現状です。

ふるさと納税で節税可能な人は迷惑な改正ですが、行政としては、ふるさと納税の返礼品3割制限はやむを得ない措置でした。

 

ご参考になれば幸いです!