税務署に勤務した中で大変な思い出や辛い出来事を数多く経験しました。
納税者からの苦情や嫌味、先輩からの「はぶり」など思い出したくない出来事はたくさんあります。
(その先輩は生涯忘れることはないです)
それでもそこから学んだものや、『今』の自分に役立っているものも多くあります。
税務署に在籍したことは決して無駄ではなく、その中にも良かったこともありましたのでご紹介します。
1 色々なジャンルの人の話を聞ける
税務署の最大のメリットです!
税務署には
・ 納税の申告
・ 還付の申告
・ 滞納の手続き
・ 調査による来署
さまざまな人が出入りします。
私は相続税・贈与税を扱う資産課税部門に所属してたのですが、相続税は基本的には富裕層の方が対象になるので、今まで自分が生活してきた世界とは別の人とお話しできました。
都心部の税務署であれば、相続財産が10億円を超えることも珍しくありません。
その相続人に関しても、事業経営や医者などの職についている人が多く違う雰囲気を感じられました。
地元で就職していたらそのような方々と対等な立場で話を聞ける機会はまず存在しません。
特に、一代で財産を築いた人は考え方や思想を持っていて、その考え方を子ども(相続人)にきっちり教育しているので、子どもも人格者の人が多いです。
逆に先祖代々の不動産や財産を相続している家族の場合にはドラ息子・娘がいたりします。
富裕層で脱税する人にも非協力的な人はいますが、割合的には富裕層の方が税金について理解をしている方が多く、メディアで一方的に富裕層が批判されるのには私は納得がいかなかったです。
贈与税に関しては地域によって差があり、面白いです。
所謂ベットタウンの地区では住宅の購入資金の援助を受けるために申告をする人が多いですが、都心部になると生前中の財産の分配や財産整理を目的として贈与するケースが多いです。
また、贈与は口約束でも成立するため、書面に残さないことが一般的ですが、都心部に近いほど贈与契約書を作成し、客観的に贈与が行われたことを示せるようにしています。
(税務署側も書類など確認できるのもがある方が納得できるので有効です)
2 税金の知識が得れる
税金関係の仕事は士業(税理士や司法書士)もありますが、税金自体を取り扱うのは行政機関しか存在しません。
対外的にも公表はされている部分も多いですが、普段の生活で特にサラリーマンの人が税務署の仕事を考えることは無いと思います。
そのような情報を仕事として接することができるのは視点を広げられるので有益でした。
また、税金と一括りにしても種類が多いですが、税金の流れ自体は似ているので、分野外の税金でも少し調べえばなんとなく理解できてしまうのもよかったです。
税務署は国民年金や国民健康保険などは全くの分野外なので知識はありませんでしたが、窓口相談中で話題になるうちになんとなくイメージはつくようになります。
3 税務署の立ち位置を知れる
自営業の人や法人を運営している人は馴染みがあると思いますが、サラリーマンの過程ではほとんど関係ない職場です。
私の友人に職場が税務署と伝えても、「税理士?」と勘違いするくらいでした。
(私の周りが税の知識にい乏しいだけかもしれませんね(笑))
税務署自体は組織の中では末端中の末端なので、上級機関(財務省や国税庁)の人と会うことはありません。
しかし、指示や情報は国税庁からあるので、さまざまな情報が入ります。
ただし、指示がくるのは上級機関の幹部決裁が終わった後なので、関係する情報を最初に知るのが報道であったケースもありました。
私が経験した電話相談で、「テレビで報道してた贈与税の非課税制度について知りたいけど」と質問がありました。
電話の時点では質問してきた制度は案の状態で、税務署は成立した法案についてのみしか回答できないとお茶を濁しましたが、自宅に帰り報道で新制度の改正があることを知った経験もあります。
税務署は国の機関であって、最も国民と接することのある組織です。
本来であれば、国税庁全体が一体運営できればいいのですが、それが全くできていません。
税務署には調査権という強い権限を所持してますが、同時に、決まった(指定された)動きしかできないもどかしさも兼ね備えています。
4 理不尽を体験できる
仕事をしている以上、会社員・公務員関係なく働いていれば理不尽な出来事は経験します。
会社であれば会社が取り扱う分野のみが対象ですが、公務員は国民全体の奉仕者であるため、国民全員から苦情が入る可能性があります。
電話で持参する書類を説明したが、納税者が持ってこないと「そんなこと言われてない」と逆切れされる。
(ごく普通にあります)
確定申告会場で申告書作成の入力で一時的に入力ミスがあった場合には
「これ俺が指摘しなかったらどうなってたんだよ!」
と怒り出す。
(それでも決して自分では申告書を作成しようとはしない)
「何で私みたいな庶民がこんな高い税金を払わないといけないの」と数千万円の相続財産を取得した人が発言する。
さまざまなご意見を頂戴しました。
言うまでもありませんが、苦情に正当性があるもは非常に多いですし、残念ながら(能力の低い)職員の対応が不適切なケースもあります。
公務員は納税者を選ぶことはできません。
納税意識が乏しい人でも、高額な税金を納付している人でも平等に接しないといけません。
一番の理不尽はそこにあります。
普通の感情であれば、こちら側の意見に理解をして賛同している人を贔屓したくなるもです。
でもその人を贔屓したら処罰されます。
この理不尽は中々大変でした。
あと、(罰則は当然ありますが)著名人の収入を調べようとすれば可能です。
しかし、調べたところで自分にいは何も利益になりませんし、それどころか懲戒免職(クビ)のリスクがあまりにも大きいので、99.99%の職員は一切しませんが。
そもそも、誰がいくら収入があるといった部分に関しては殆どの職員が興味を持っていません。
調査対象として、
・ 収入がどうか
・ 所得がどうか
・ どこから報酬を受けているか
などは見ますが、誰がいくら収入があるかにいちいち関心をもっていては仕事にならないので、扱い上は単なる数字でしかありません。
万が一著名人の収入等が知りたい方は刑務所に入る覚悟を持って採用試験を受けてください。
さすがにそんな人いないと思いますが(笑)
5 数字に強くなる
相続税や法人税になると扱う数字の桁が多くなります。
相続税は納税額が数百万円や数千万円が普通なので、お金という認識ではなく『数字』として考えるようになります。
200,000,000円
すぐにこの金額がいくらか言えますでしょうか?
税務署職員であれば即答できます。
なんの役にも立ちませんが(笑)
それでも、数字に目がクラクラすることはありませんのでその点はよかったです。
おわりに
いかがでしたでしょうか?
こう見るとあまり役に立つことが無いですね(笑)
でも、私は税務署にいたおかげでこの記事を書くことができています。
私自身で考えればこれが税務署に在籍して一番得た知識かもしれません。
ご参考になれば幸いです!